ロシアのオリガルヒのひとりとされているミハイル・フリードマン氏が「エル・パイス紙」のモスクワ駐在記者を40年勤めたピラール・ボネー氏からの質問に答えた内容が3月28日付で同紙に掲載されている。以下にそれを紹介したい。
ロシアで11番目の富豪フリードマン氏
その前にフリードマン氏(57)のことについて少し説明する。彼はロシア崩壊後のエリツイン大統領政権時に財産を築いた人物で、3月16日付「インフォバエ」によると彼の資産は155億ドルと評価されている。この資産額だとロシアで富豪者番付11番目にランキングされている人物だ。ということでプーチン大統領の政権時に庇護を受けて資産を増やしたオリガルヒとは異なる。
フリードマン氏とピョートル・アベン氏が共同で設立した投資企業レターワン・ホールディングスがスペインで良く知られるようになったのはスーパーマーケットチェーンのディア(DIA)の77%の株主だということだ。ディアはカレフールから別れて誕生したスーパーで、スペインでその規模から3番目にランキングされているスーパーであったが経営不振に陥っていた。2019年に敵対的買収によってレターワンが70%の株を取得して手中に収めたもの。しかし、EUによる制裁の対象にされた二人は既にレターワンから退いていた。
レターワンはディア以外にもEU内で複数の投資先をもっているが、フリードマン氏は制裁を受けて彼の投資資産はすべて凍結されている。だから資金を得るのに自らの資産の売却をしよとしてもできない状態だ。勿論、EU圏内での移動もできないということからロシアに戻る以外に選択肢はないといった感じだ。
彼は英国に在住しているが、「英国の関係当局は私がタクシーに乗ったり買い物をしたりすることができるように一定の金額を使えるようにしてもらいたい。しかし、仮にそれができたとしてもロンドンでの生活費を考慮するとその額は可なり制限させられるものになるだろう」とフリードマン氏は述べた。
英国で購入しリフォームした住居にこれからも居続けるか分からないと指摘している。英国に住居を構えることにしたのはロスネフチの株の売却で得た資金の投資先を多様化させるためだった、とも述べた。
そしてフリードマン氏は「プーチン大統領の戦争をオリガルヒが中断させることが出来ると考えるのはバカげた意見だ」と述べ、プーチン氏の前にオリガルヒの影響力は僅かであることを指摘し、寧ろウクライナで起きていることの悲惨さを重要視した。
ロシアで彼が関係している多種企業では40万人から50万人が働いている。それを考慮しているのか、「私に依存している人達が危険に晒されるのは容認できないことだ」と述べて今回の戦争による悪影響が彼の企業に及ばないことを願っているということだ。
オリガルヒがプーチン大統領に影響力を与えることなどできない
そしてフリードマン氏が指摘するのは、民間の企業はプーチン大統領に影響を与えることなどできないということ。彼が言うに「選挙がもっと自由に実施させるのであれば、我々個人の観点も伝えるように努めることはできるであろう」と語った。
「欧米はもっと賢明であるべきだ。単にロシア人であるということだけで処罰するのは対立を生むだけで、ロシア国内において反欧米を支持する人たちが増えるだけだ」と述べて、ロシア人も多種多様でそれを一括して責めることがそぐわないことを挙げた。
「私はロンドンに8年住んでいる。英国を始め他のヨーロッパの国で数十億ドル投資して来た。にも拘らず、その回答は私のすべて財産を押収し、しかも私を追い出そうというのだ」と述べて不満を表明した。
「我々はビジネスをやっているだけで、権力に近づこうとしたことはない。また一定の距離を置くように心がけても来た」と述べた。そして2003年にプーチン大統領がオリガルヒのひとりミハイル・ボソルコフスキーを収監させたことによって「政治に如何なる関与も受け入れられるものではないということが分かった。それ以来どの政治家へも支援しないことにした」と述べた。
「国の政治リーダーたちに影響を与える意味で経済的制裁は有効である。しかし、一般の企業家への制裁は意味ないものだ。というのもビジネスを成功させたのは彼らの能力、努力、資質によるものだからである」と述べて彼らは政治に影響力を発揮できないことから企業家への制裁に反対を表明した。