安倍元首相の「日銀は政府の子会社だ」という発言を時事通信が報じて、話題になっています。
これは安倍さんの持論で、2017年にも「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの。連結決算で考えてもいいんじゃないか」と発言しています。
去年12月の講演でも、こう発言しています。
赤字国債のほとんどは、市場を通じて日本銀行に買ってもらった。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ。荒っぽい言い方だが、日本銀行は国の子会社。立派な中央銀行だが、5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する。
ところが今さらこれに対して「日銀の独立性を脅かす」という批判が起こりました。
野党も騒ぎ始めました。
しかしこれは誤解です。日銀は政府の子会社というより政府機関そのものです。
経済学でも政府と日銀のバランスシートは区別しないで、同じ政府債務として扱いますが、これは「国債を日銀が買ったら借金がチャラになる」ことを意味しません。
安倍さんの「連結決算上は債務ではない」というのは間違いです。次の図のように統合政府でみると、政府債務が国債から日銀当座預金に置き換わっただけです。子会社が親会社の社債を買っても、子会社の借金が増えるだけで、連結の借金は同じです。
今はゼロ金利だから、安倍さんのように日銀当座預金と日銀券の区別がつかない人が多いが、これから金利が上がると、500兆円以上の日銀当座預金に1%の金利がついただけで毎年5兆円以上の金利負担が発生し、日銀は2年で債務超過になります。
だから安倍さんの「借金を全部背負っているのは日本銀行だ」という話も間違いです。子会社の借金は親会社の借金なので、最後は税金で返さないといけません。日銀が債務超過になったら、一般会計から補填するのです。
中央銀行に独立性をもたせたのは、インフレが激しかった1980年代に、政府が景気対策で金融を緩和するバイアスがあったためですが、今は逆に日銀がインフレにしようとして、政府が「悪い円安」を恐れています。
どっちにしても日銀は政府の子会社なので「独立性」には意味がありません。金融庁と合併して政府機関とし、統合政府としてどれぐらいまで借金するかをコントロールする独立行政委員会をつくったほうがいいでしょう。