日本人は国内競争ではなく、国際競争を意識しなさい

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

日本は色んな意味で特異性に溢れた国家だと思う。それは良い意味でも、悪い意味でもだ。

良い意味としては、1億2000万人の多様性の受け皿となる、ありとあらゆる商品サービスが溢れかえっていることだ。牛丼チェーンだけでもいくつもあるし、英語学習法も数え切れないほどの講師が、それぞれの学習メソッドを提供している。中小企業は300万社もあり、日本人のテイストに合うものが国内で過剰に提供され、途方もない選択肢がある。とても心地よい環境だ。筆者は居心地が良すぎる日本から出たいとは思わない。

しかし、悪い意味では日本人のテイスト向けに特化し過ぎだと感じることがある。その結果、日本国内で日本人同士で熾烈な競争を繰り広げているのを後目に、海外での戦況は芳しいとは言えない。個人的には国内競争ではなく、国際競争を意識することが重要ではと感じる。

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世界の中で消えていく「日本の存在感」

一昔前のアニメや映画を見ると、「日本はビジネスでは成功し、優れた技術力があるが、人の心を忘れつつある」という類の描写がある。映画に出てくる家電製品は日本製で、日本の話題が出てくると日本人としてくすぐったいような嬉しいような感覚にさせられる。

だが今はどうだろう? この評価の方法が妥当かどうかの議論は別にして、少なくとも世界時価総額ランキングを見る限り、日本の存在感は絶頂期と比べればかなり消えていると感じる。そして少なくとも今の時点では、この存在感を取り戻せそうな展望の明るい何かは見当たらない。

しかし、国内競争は昔とあまり変わらない感覚がある。日本のGDPは国内消費が6割であり、国内向けのビジネスだけで十分すぎるほど豊かになれる大きなパイがある。起業する人にとっては「なぜわざわざ苦労して海外にビジネス展開する必要があるのか?」という感覚を持つだろうし、それは少しもおかしくはない。

真の問題は、日本がシュリンクすることでこの状況がおそらく永遠には続かないということだ。

個人も企業も国内でなく国際競争へ

もちろん、我が国でも国際競争で勝ち続けている企業はたくさんある。自動車産業やゲーム産業である。トヨタは全売上の76%が海外(2020年)であり、人気ゲーム会社のカプコンは81%が海外売上(2021年)となっている。だが、依然として圧倒的多数の企業も個人も多くが国内競争を意識している。

筆者は大きく意識を変え、今は国内向けビジネスだけでなく、海外向けビジネスにリソースの力点をおくようにしている。日本国内に住みながらでも、オンラインに仕事は無数にある。翻訳、通訳、プログラミング、デザイン、動画編集、語学学習、そしてYouTuberである。

昨今は日米金利差による円安で物価高が懸念されるが、ドル建てで収益を得れば今の状況は追い風になる。さらに収益源を日本円と米ドルの両方作ることで、為替のリスクヘッジができてしまうのだ。

言語の壁より文化の壁

多くの人は海外向けのビジネスの障壁は「英語」だと思いこんでいる。確かにある程度の英語力は必要だ。しかし、ビジネスで必要になる英語の9割は「読み書き」である。

筆者は海外の外国人とのビジネスコミュニケーションはほとんどがテキストで完結している。時差もあり、お互いの予定を調整する国際電話の出番は、テキストに比べてずっと少ない。そしてテキストでやり取りが済むので、必要な英語力は多くの人が思っているより低くても問題はない。さらにAI翻訳の力も借りることができる。ビジネス英語はちゃんと基礎を鍛え、後は必死に仕事をすれば必然的に高まるだろう。

それ以上にずっと高い壁が「文化の壁」である。日本人同士だとウケることも、外国人相手には価値が理解されないことはたくさんある。筆者も最初の頃、何度も海外向けビジネスでコケた(未だによくコケる)。そうなると、よしんばどれだけ英語力が高かったとしても、ビジネスとしての成功はない。特に日本人は国内の日本人テイストの商品サービスに慣れすぎている。同じ視点で提供するとズレる。それ故に海外にウケる商品サービスを考える必要があるのだ。

散々、日本は独自テイストだといったが、それが逆にウケることもある。外国人からすると、日本はミラクルづくしの宝の山に感じられていることだろう。実際、日本人が気づかなかった日本人向けの商品をアメリカにもちこみ、成功をおさめるアメリカ人ビジネスマンもいる。

つまり、日本国内には海外向けビジネスで成功できるたくさんの宝の山がある。必要なのは国際競争の意識と行動力だけだ。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。