謎だ。
選挙の公約あるいはとても実現しそうもない主張を、各党が絶叫しているが、外交・防衛に関しては、立場によって一応あり得る政策が多いが、不思議なことに、経済政策に関しては、すべての党の主張が間違っている。
ここでいちいちどう間違っているかは議論しないが、私にとって一番不思議なのは、ここまで経済政策が滅茶苦茶なら、外交や防衛についても同じくらい滅茶苦茶なはずなのだが、どうみても経済政策が断然意味不明だ。他の科目はまともなのに、算数だけ極端にできない小学生みたいだ。
なぜなのだろう?
仮説はいくつかある。
仮説1:経済というのは、複雑な要素が絡み合っていて、外交や防衛に比べて、そもそも難しい問題である。
算数は国語よりも難しい、という説だ。
違う。
そもそも国語は算数よりも難しい。算数は順番を踏めば誰でもできる。ちゃんと順番を踏んでやる気がないからできないだけのことだ。一方、国語は複雑で曖昧な部分もあり、教えるもの、勉強として勉強するのが難しい。算数は勉強すれは誰でもすぐにできるようになる。苦手意識さえなければ。
それと同じで、経済の方が理屈ではっきりしていることが数多くある。外交は相手があるし、相手もどう動くかわからないし、一対一の関係ならともかく国際情勢は様々なプレーヤーがいて、かつ一国の中のプレーヤーも多数であり、その関係は外部からはなかなか理解できず、本当に難しい。
経済の方がより単純で強力な理屈で整理できるから、むしろもっとも単純な問題のはずだ。
仮説2:政治家は経済に関心がない。防衛には関心がある議員が多い。右にせよ左にせよ。
これはあり得そうだ。
近年の元首相たちの多くは、憲法9条改正がライフワークと位置付け(本当に彼らがそう思っていたか、真偽については議論があるだろうが)、それなりに自身で議論を展開できたが、経済理論は滅茶苦茶だった。これは、もともと経済政策には関心がなかったから、認識の深さ、正確さにおいて違いが出たのは仕方がない、ということだ。これはある。
今回の選挙は、外交、安全保障への国民の関心は、ロシアのウクライナ侵略で一時的に高まったが、数か月たつとその戦争状態になれてしまい、すっかり薄れてしまった。それよりもガソリンと電気代が月に何十円上がるかの方がはるかに大きな関心事であり、選挙の関心事項となった。
しかし、多くの立候補者は、自分の運命がかかっているにもかかわらず、その認識が足りず、特に、選挙後、その活動にかかわれる可能性のある政党に所属する候補者たちは(つまり、国会に一定数以上の議席を党として保有している政党の候補者たちは)、自分の意欲関心を優先させて、いや有権者は本当は防衛の方に関心があると思い込もうとしている。
多くの政治家が自分中心主義的な傾向が一般の国民よりもはるかに強く見えるのと整合的な行動パターンである。
要は、多くの政治家は国民のことにはあまり関心がない、という事実の具体的な顕在化の一例ということだろう。
仮説3:経済にはまったく関心がない。どうなっても構わない。ただし、選挙には勝ちたいから、選挙に有利だと一般的に思われている経済政策を一応主張している。
私には、この仮説が正しいように見えてならない。
財政破綻したら、年金増やせ、消費税減らせ、などと言っている場合ではなく、医療崩壊、介護崩壊、年金ももちろん崩壊、すべて滅茶苦茶になり、多くの高齢者、多数を占める有権者は路頭に迷い、政府いやそれを招いた政治家達にとてつもない恨みを持つだろう。それでもいいのだろうか?
先のことはまた先になったら考える。目の前の選挙、目の前の権力を取る、それが最優先ということなのだろう。そして、関心がないから、まあそんなことは起きたら困るから、困ることは起こらないだろう、という嫌なことは起きないと考える、行動経済学を持ち出すまでもない、小学生よりもわがままな自分勝手なご都合主義の発想でいるのだろう。
そうでなければ、経済成長にはむしろマイナスである、国民への一律の給付金配布、コロナ対策のバラマキ、円安容認、などを主張する理由がない。
日本が経済成長しなくなったのは、無駄にカネをばらまき、将来への投資企業も個人も政府もせずに、目先の消費だけのことしか考えなくなったからである。投資しなければ成長しないのは明白で、この結果、日本人学生の知力は急低下、英語力は世界最低となり、それでも誰も義務教育の強化を言わずに、大学に研究費をばらまいて、ノーベル賞を1つだけ増やすことで満足している。
あまりにつまらない結論になってしまったが、日本がそれだけ単純に愚かな国になってしまった、ということであり、単純な現実に直面するしかないが、国民自身にもその気がなく、どの政治家もぱっとしないから、と政治家が駄目な奴らであることが日本がいまいちになっている理由として、自分たちの責任とはだれも考えない。
どうもそういう単純なことであるようだ。
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