非正規ばかり増える女性労働者

kazuma seki/iStock

1. 非正規労働者が極端に増えている

前回は男性労働者の雇用形態別シェアについてフォーカスしてみました。

20代、30代の若年世代でも非正規労働者が増え、中年世代、高齢世代では経営者が非正規労働者に切り替わっているような変化が見られます。男性の場合、労働者数が減っていく中で非正規労働が増えているという不可解な状況です。

今回は、女性労働者の変化についてフォーカスしてみましょう。

図1 有業者数 女性
就業構造基本調査 より

図1は世代別の女性有業者数の分布です。

日本経済のピークだった1997年(赤)と直近データの2017年(青)の比較になります。

少子高齢化の影響で20代の労働者数は170万人ほど減少していますが、それ以外の世代では増加しています。

特に男性では減少していた30~50代でも増加しているのが特徴的です。つまり、共働きの増加も含めて、人口減少以上に女性の労働参加率が高まっている事が窺えます。

図2 有業者数 女性 就業上の地位・雇用形態別
就業構造基本調査 より

図2が就業上の地位・雇用形態別の分布です。

女性労働者が全体としては2,748万人から、2,914万人と160万人ほど増加しています。自営業主が90万人、家族従業者が230万人、正規職員・従業員が60万人減少し、非正規職員・従業員が540万人も増加しています。

女性労働者の約半分(50.2%)が非正規雇用という状況です。

有業者数 女性
1997年→2017年 単位:百万人
27.5 → 29.1 (+1.6) 合計
2.3 → 1.4 (-0.9) 自営業主
3.3 → 1.0 (-2.3) 家族従業者
0.9 → 0.8 (-0.1) 役員
11.8 → 11.2 (-0.6) 正規職員・従業員
9.2 → 14.6 (+5.4) 非正規職員・従業員

自営業主や家族従業者の一部が置き換わったとも見て取れますが、それ以上に非正規雇用ばかりが増えている印象ですね。

2. 20代と30代で異なる雇用事情

それでは、世代別に女性労働者のシェアを見ていきましょう。

まずは人数の減っている20代からです。

図3 有業者数 女性 20代 1997年・2017年
就業構造基本調査 より

図3が女性の20代の変化です。

労働者数が170万人ほど減少する中で、正規職員・従業員が170万人減り、非正規職員・従業員が微増しています。

シェアで見れば正規雇用が70%→61%と減少する半面、非正規雇用が28%→38%と増加しています。この世代は自営業主や家族従業者、役員はもともと微小ですが、更に減少傾向のようです。

女性 有業者数 20代
1997年→2017年 単位:百万人
6.3 → 4.6 (-1.7) 合計
0.1 → 0.1 (-0.0) 自営業主
0.1 → 0.2 (+0.0) 家族従業者
0.0 → 0.0 (-0.0) 役員
4.4 → 2.8 (-1.6) 正規職員・従業員
1.7 → 1.7 (+0.1) 非正規職員・従業員

図4 有業者数 女性 30代 1997年・2017年
就業構造基本調査 より

図4が女性の30代の変化です。

合計人数は約90万人増加しているなかで、自営業主や家族従業者が大きく減少し、正規職員・従業員と非正規職員・従業員が増加しています。

シェアで見ると、正規職員・従業員が47%→50%で微増ですが、非正規職員・従業員が36%→45%で大きく増えています。

女性 有業者数 30代
1997年→2017年 単位:百万人
4.6 → 5.4 (+0.8) 合計
0.3 → 0.2 (-0.1) 自営業主
0.4 → 0.1 (-0.3) 家族従業者
0.1 → 0.1 (-0.0) 役員
2.2 → 2.7 (+0.5) 正規職員・従業員
1.7 → 2.4 (+0.8) 非正規職員・従業員

30代は人数が増える中で正規雇用も増えている点が特徴的ですね。ただし、シェアとしては非正規雇用の方が伸びていますので、非正規雇用の方が優先されている傾向はありそうです。

3. 非正規雇用に切り替わる中年世代

次に40代、50代の中年世代についてみていきましょう。

図5 有業者数 女性 40代 1997年・2017年
就業構造基本調査 より

図5が女性の40代の変化です。

労働者数は約40万人増えています。やはり自営業主、家族従業者が減っていて、正規職員・従業員が微増、非正規職員・従業員が大幅に増加という変化です。

女性 有業者数 40代
1997年→2017年 単位:百万人
6.8 → 7.2 (+0.4) 合計
0.5 → 0.3 (-0.2) 自営業主
0.7 → 0.1 (-0.6) 家族従業者
0.2 → 0.1 (-0.1) 役員
2.5 → 2.8 (+0.3) 正規職員・従業員
2.7 → 3.9 (+1.2) 非正規職員・従業員

正規雇用も増えてはいますが、非正規雇用の増加の方がかなり大きいようです。

正規雇用のシェアはほぼ変化がないので、自営業主と家族従業者が非正規雇用に切り替わったような印象ですね。

図6 有業者数 女性 50代 1997年・2017年
就業構造基本調査 より

図6が女性の50代の変化です。

人数が約30万人増える中、自営業主、家族従業者が大幅に減少しています。人数では正規職員・従業員が微増(シェアでは34%→35%)、非正規職員・従業員が大幅に増加(シェアでは35%→55%)しています。

女性 有業者数 50代
1997年→2017年 単位:百万人
5.5 → 5.8 (+0.3) 合計
0.6 → 0.2 (-0.3) 自営業主
0.9 → 0.2 (-0.7) 家族従業者
0.3 → 0.2 (-0.1) 役員
1.9 → 2.0 (+0.3) 正規職員・従業員
2.7 → 3.9 (+1.2) 非正規職員・従業員

自営業主や家族従業者が、正規雇用や非正規雇用に切り替わったような変化をしていますが、やはり非正規雇用の方が大幅に増加している状況ですね。

4. 非正規雇用だけ激増の高齢労働者

最後に60歳以上の高齢労働者の変化を見てみましょう。

図7 有業者数 女性 60歳以上 1997年・2017年
就業構造基本調査 より

図7が女性の60歳以上の変化です。人数そのものが200万人と大幅に増加した中での変化であることにご注意ください。

1997年の時点では自営業主と家族従業者で55%のシェアだったのが、2017年には23%ほどに縮小しています。

人数では自営業主は約10万人減ですが、家族従業者は60万人ほど減っています。正規職員・従業員はシェアは微増、非正規職員・従業員のシェアは24%→55%と大幅に増えています。

女性 有業者数 60歳以上
1997年→2017年 単位:百万人
3.6 → 5.6 (+2.0) 合計
0.8 → 0.7 (-0.1) 自営業主
1.2 → 0.6 (-0.6) 家族従業者
0.3 → 0.4 (+0.1) 役員
0.5 → 0.8 (+0.3) 正規職員・従業員
0.8 → 3.1 (+2.3) 非正規職員・従業員

正規雇用も確かに増えてはいますが、非正規雇用の増え方が非常に大きいですね。200万人という全体の増加数を上回る、230万人もの非正規雇用が増えている状況です。

いかがでしょうか、今回は女性労働者の変化についてフォーカスしてみました。

高齢労働者が増えている事に加えて、20代以外の各世代で労働者数が増えています。働き方の変化としては、自営業主や家族従業者が減り、それ以上に非正規雇用が増えている状況ですね。

男性と同様に、特に人数の減っている20代で非正規雇用の人数もシェアも増加しているのが特徴的です。

30代より上の世代では、主に家族従業者が非正規雇用に切り替わっている面もありますが、それ以上に非正規雇用が増えている状況ですね。(家族従業者は無給の場合などもありますので、正規雇用と非正規雇用のどちらに近いかはとても微妙なところだと思います。)

これは高齢労働者だけに当てはまるわけではなく、全世代で共通した傾向のようです。

日本においては、女性労働者は男性労働者の補助的な役回りという扱いが多いのかもしれませんね。

図8 平均給与 女性 年齢階層別
民間給与実態統計調査 より

実際に世代別の平均給与を見ても、女性はほとんど世代間の給与差がありません。

男性は世代が上がるごとに平均値も大きく増加します。男性労働者と比較すると大幅に低い水準で停滞しています。

逆に男性のように、1997年をピークにした低下がみられず、停滞の上増加傾向である点が興味深いです。

図9 性別による所得ギャップ 2014年 中央値
OECD統計データ より

日本は男女間の所得格差が大きい国ですね。少しずつ格差は減少傾向ですが、男性の所得が低下して格差が縮まっている面もあるのが特徴的です。

今後全体の労働者が減っていく中で、女性の働き方や待遇はこのような扱いのままで良いのでしょうか?

もちろん扶養控除の範囲内で一定の収入以内に抑えたいという働き方を選択している人など、人それぞれ事情も異なると思います。

一方で、女性にしかできない仕事や、女性だからこそ加えられる仕事の価値もあるように思います。

高齢男性の非正規労働者が増えている実情も踏まえると、「安い仕事を多くの安い労働力で賄う」という仕事観が大きいように思います。多様な働き方がありつつ、能力のある人が成果を出しやすい環境を作っていく事も大切ですね。

現在は生産年齢人口が減少している中、労働者数が増えている状態なのでこのような仕事観でも成り立っているのかもしれません。

しかし今後更に人口減少が進み、労働者数も減少に転じるタイミングが来るはずですね。今のうちに「人の仕事の価値を上げていく事」が必要ではないでしょうか。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年7月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。