ニッポン風責任のとり方では警察は何ら変わりません

政治家の「記憶にございません」は常套句でありますが、山際経済再生大臣の旧統一教会に絡む記者会見で2016年、19年に同団体関係のイベントに参加したことを「しっかりとは自分自身でも覚えていない」と述べたことに私はのけぞりました。この答えには3つの可能性しかありません。ご本人が認知症か、仕事をいい加減にやってきたか、ヤバいと思って隠し通しているか、です。3番目のヤバいという訳ではなさそうで、2番目の仕事を惰性でやってきたのではないでしょうかね?私は仕事だけではなく人生を一生懸命に歩んできたのでかなりの記憶はあります。ましてや誰とどこでどうしたかぐらいは普通分かるものです。となれば任命責任が問われますよ、岸田さん。

では今週のつぶやきをお送りします。

ジャクソンホール

そもそもジャクソンホールの会議はもっと学術的で金融市場について経済学者などを交えて議論をする場でした。が、そこに招かれるFRB議長の講演で先々の金融政策を暗示することもあり、この10数年急速に着目されるようになりました。実は私は今年は無風を期待していたのです。前回のFOMCでパウエル氏は政策はデータ次第と強調し、次回のFOMCまで8月度の雇用統計と消費者物価指数の発表を控える中、ポリシー的に何も変化はないと予想していました。事実、彼はそう発言しているのですが市場は何か、甘いものをねだるようなつもりだったのでしょう。失望売りが出ました。

結局パウエル氏も含め中央銀行はインフレを抑え込むために利上げをするという単純な方程式を示すのみなのですが、インフレの原因がどこにあるのか、分析が十分ではない気がするのです。アメリカのダラーショップ(いわゆる100均)の業績が好調のようですが、100均が流行るのは景気減速の明白なシグナルの一つで08年のリーマンショック後にもそれは起きました。かつてビックマック指数というのがありましたが、「景気の温度はダラーショップに聞け」と私は思っています。

先日カナダのファミレスで会計をした時カードマシーンのチップの提示は18,20,22%でした。ひどいところは30%まであるそうですが、チップで2割差し上げても飲食店に人材は集まりません。高校や専門学校を卒業して一歩目の社会人経験の場が飲食店という人も多いのですが、カナダCBCの調査では人材流出が一番多いのが飲食、ホテル業で理由は年収が低いから。ちなみに最も人気なのは高度な専門職で年収1000万円は最低線という時代なのです。労働者の取捨選択を作ったのが今回のインフレの隠れた主役だと私は疑っています。

ニッポン風責任のとり方

安倍首相暗殺事件を受けて予想通り中村警察庁長官と桜沢警備局長が辞任しました。事件のあと、タイミングをみて辞任すると思っていましたが、予想というより必然でした。民間も官庁も責任のとり方は似ているのですが、特に官庁の場合、在任期間中に「何もなければよい」無風を期待するのが普通。特に警察ならばキャリア入社で23歳で警部、すぐに警視で警察署長を踏み台にして…という具合ですので現場責任者の警察署長勤務ならば署全体で「キャリア様をお守りする」というまるで江戸時代の大名と家臣のような話であります。

これが日本の事なかれ主義にもつながっており、受動的仕事はするけれど能動的仕事は極端にしないようにします。なぜなら役人にとって目立つことは自分の人生を潰すきっかけになるからです。日本の組織論は功罪いろいろあると思いますが、動かない役所が岩盤であることは間違いありません。しかし、受動的業務ならばいつかはコンピューターやIT、ロボットにとってかわることが可能です。「俺は潔くやめる」というのはハラキリではあるまいし、格好よくもなんともありません。

海外の場合は責任は下に押し付ける、上はSorryすら言いません。責任の押し付け方は基本はクビです。日本は下はクビにならず、上が自主退職なのです。どっちもどっちですね。ただ日本の場合は世論が許さないのです。「責任者を出せー!」の国ですから。「責任者は私です」と胸を張って言えるような下を育てるのが上の仕事だと思います。中村さんや桜沢さんが辞めたところで警察は何ら変わりません。警備の強化はするかもしれませんが、本当に必要なのは体質改善ではないでしょうか?

gyro/iStock

食糧危機がもたらすこと

食材価格が上がり、手に入りにくくなるものも増えている中、食糧問題は今後否が応でもクローズアップされることになるでしょう。戦争だけではなく、気候変動による不作や不漁もあります。今年もサンマ漁が解禁になりましたが、初物のサンマは一尾5000円也。昔、サンマ定食は2尾ついて500円だったよな、と思います。かつていくらでも取れたニシン漁とそっくり同じ道のりであります。中国では干ばつと豪雨で農地に危機感が漂います。中国の最大の淡水湖はもう1/4に干上がっています。

ウクライナは欧州の穀倉地帯で世界でも有数の農業国です。欧州のみならず中東やアフリカの胃袋を支えているのです。船積出荷は始まりましたがそもそもウクライナには鮮度を保って貯蔵できるような設備が少なく、今後、年単位で足りない状態が続くと想定した方がよいでしょう。日本は高級食パンがブームでしたが小麦の値上がりでたぶん、ビジネスとして成り立たなくなるとみています。

食べ物の傾向も少しずつですが変わっていく気がします。飽食の時代は終わりで必要なものを必要なだけ食べるのがトレンドになるとみています。牛肉の消費は着実に落ちると思いますが、日本の和牛はその点で真逆のような気がします。そもそも和牛は海外でも話題にはなるけれど商品としては普及しにくいのです。理由はサシが多くて欧米人の好むステーキの味にならないのです。日本はグルメの人が多いですが、食糧危機を機会に人々の食への価値観やこだわりが少しずつ薄れていくように感じます。

後記
州の大臣からお誘いを受けて行った党の資金集めの食事会。集まったのはざっと300名弱。ほぼ決定している次期州首相もいて3年ぶりに握手をしたけれど彼は残念ながら私を覚えていませんでした。会食は4時間でその間、参加者は動き回り、いろいろな人とネットワークを広げます。このような資金集めは今後、何度も行われます。件の大臣も「私も秋にやろうかな」と言われお財布からお金がまた羽を出して飛んでいくシーンが浮かびます。ただ、強力なネットワーク構築にはこういう世界もあるのですよね。案外利用価値はあると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月27日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。