日本人の可処分所得は少ない?

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1. 日本人の可処分所得

前回は日本の「可処分所得」と「等価可処分所得」についての統計データを眺めてみました。

私達の生活が豊かになるためには、可処分所得が増えていく事が必要ですね。残念ながら、日本の家計では1997年をピークに可処分所得は減ってしまっています。世帯人員で可処分所得を調整した等価可処分所得を見ても、1990年代をピークに減少している事を確認しました。

今回は、日本人の可処分所得が、先進国の中でどの程度の水準なのかを見ていきたいと思います。

まずは、OECDの日本のデータから確認していきましょう。

図1 等価可処分所得 中央値・平均値 18~65歳 日本
OECD統計データ より

図1は、OECDで公表している日本の等価可処分所得のデータです。

18~65歳の現役世代に関する平均値と中央値となります、データ間隔が異なりますのでご留意ください。

この可処分所得には、給与所得などの収入に、社会保障給付などを加え、所得税や社会保障負担などを差し引いた家計が自由に使えるお金という事になります。

具体的には、この可処分所得には次の項目が含まれます。

  • 給与所得 (Total earning)
  • 財産所得 (Capital income)
  • 事業所得 (Income from self-employment and from goods produced for own consumption)
  • 経常移転給付 (Current transfer received)
  • 経常移転負担 (Current transfer paid)

可処分所得 = 給与所得 + 財産所得 + 事業所得 + 経常移転給付 – 経常移転負担

等価可処分所得は、可処分所得を世帯人員の平方根(√)で割って一般化した指標です。

前回ご紹介した日本の統計データ(国民生活基礎調査)のうち、「高齢者世帯以外の世帯」とほぼ一致します。

1990年代に高い水準に達していて、その後大きく減少し停滞傾向が続いています。

図2 等価可処分所得 中央値 18~65歳 推移
OECD統計データ より

図2が18~65歳の世帯の等価可処分所得について、為替レートでドル換算した主要国各国の推移です。

各国のデータがところどころ不足していて、それを直線でつないでいるため厳密なものではありませんので、ご留意ください。

日本は1995年に他国と比較して極めて高い水準となりますが、その後横ばい傾向が続き、近年では主要国の中でも低位となっています。

1995年は為替が円高(年平均94円/$)の時期ではありましたが、それを差し引いてもかなり高い水準に達していたことがわかります。

この数値は中央値ですが、アメリカで近年急激に増加傾向というのも特徴的です。ドイツ、イギリスなどは為替レートが近年ドル高が続いているため停滞気味になります。

自国通貨ベースでは増加し続けています。

日本は、自国通貨ベースでも停滞が続いています。

2. 等価可処分所得の各国比較

それではもう少し数値的に等価可処分所得の比較をしてみましょう。

まずは1995年のデータです。

図3 等価可処分所得 中央値 18~65歳 1995年
OECD統計データ より

図3が1995年の等価可処分所得の比較です。

平均値が16,447$に対して、日本は32,295$で約2倍です。

ドイツやアメリカの1.5倍近くの水準に達していたことになります。

等価可処分所得 中央値 18~65歳
1995年 単位:$ 21か国中
1位 32,925 日本
5位 22,484 ドイツ
6位 21,170 アメリカ
9位 19,465 フランス
11位 16,218 イギリス
13位 15,827 カナダ
14位 14,403 イタリア

次に直近の2018年のデータを見てみましょう。

図4 等価可処分所得 中央値 18~65歳 2018年
OECD統計データ より

図4が2018年のデータです。

日本は25,810$で37か国中21番目の水準です。ドイツとは1割程度、アメリカとは6割ほども差があるようです。

等価可処分所得 中央値 18~65歳
2018年 単位:$ 37か国中
1位 58,440 スイス
7位 42,270 アメリカ
8位 37,717 カナダ
16位 30,780 ドイツ
18位 28,248 フランス
19位 28,146 イギリス
20位 27,250 韓国
21位 25,810 日本
22位 23,770 イタリア

3. 近年の成長率も低い

ドル換算値だとどうしても為替の影響を受けますので、自国通貨ベースでの成長率も確認してみましょう。

図5 等価可処分所得 中央値 18~65歳 成長率
OECD統計データ より

図5は各国通貨ベースでの等価可処分所得について、2009年からの成長率をグラフ化したものです。2009年を基準として、2018年の時点で何倍になったかの倍数として表現しています。

OECD平均では1.34倍となり、カナダ、アメリカで1.35倍、ドイツで1.21倍、イギリスで1.20倍です。

日本は1.03倍でほとんど変化はありません。しかも日本は1990年代に高い水準に達した後、いったん大きく減少してからの成長率となります。

スイスも1.02倍でほぼ変化がありませんが、図3のように既に極めて高い水準に達しています。

やはり日本では現役世代の家計の可処分所得が増えていないという事が言えそうですね。

4. 貧しくなった日本の家計?

今回は等価可処分所得について各国比較をしてみました。

中央値で見ると、日本は現在のところ先進国の中で平均よりもやや少ない水準と言えそうです。更に成長率でも他国と比べて低い状況ですね。

前回ご紹介した通り、日本は等価可処分所得が一時期より目減りして停滞しています。一方で他国はほとんどの国で右肩上がりで成長を続けている事になりますね。

この傾向が続けば、今後さらに他の先進国との差が開いていく事になります。

平均給与や1人あたりGDPと同様に、家計の可処分所得でも日本は他の国から後れを取っているという事が言えそうです。

皆さんはどのように考えますか?