メガバンクの大手ネット証券取り込みで気になる「2つのこと」

日本経済新聞電子版によれば、2022年6月に三井住友FGがSBIホールディングスへの出資を発表したのに続き、みずほFGも傘下のみずほ証券を通じて楽天証券に出資するようです。800億円を出資して株式の約2割を取得するとしています。

これで3メガバンクは全てグループ内にネット証券を取り込めることになり、これから銀行顧客に対するネット証券口座の開設などのクロスセルを展開していくと予想されます。また、ネット証券の若年層の顧客に銀行の利用を促進してもらえれば、銀行顧客の若返りも期待できます。(図表を元記事で見る

しかし、ここで不安になるのが、メガバンクのカルチャーがネット証券に入りこむことによるマイナスの影響です。日本の銀行は官僚的なカルチャーが強く、過剰コンプライアンスの傾向が強いという問題があると感じています。

楽天証券やSBI証券がどんな会社なのかは良く知りませんが、新しいことにチャレンジするネット企業の強みが消されないか、他人事ながら心配です。

そしてもう1つ気になるのは、今回の一連の流れの中で、大手ネット証券の中で蚊帳の外に置かれてしまったマネックス証券の行方です。こちらは、私がお世話になった出身母体ですから、他人事とは思えません。

マネックスグループの筆頭株主は、地銀大手の静岡銀行になっています。また、新生銀行と提携したり、野村證券が株主になったりと、複数の金融機関との関係を模索しているように見えます。新生銀行は、SBIグループの傘下になり、協力関係は期待できません。そもそも、どの金融機関もメガバンクの圧倒的な顧客基盤と比べれば正直見劣りします。

メガバンクに続く大手銀行といえば、りそな銀行や三井住友信託銀行となります。これらの銀行もメガバンクの動きを見て、ネット証券をグループ内に取り込みたいと思っているはずです。もしかしたら、そのパートナーにマネックスが選ばれるかもしれない。

ちなみに、三井住友信託銀行は私が社会人生活を踏み出した銀行です。という訳で、個人的にはマネックス-三井住友信託銀行連合に期待しています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年10月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。