円安を嘆くだけで何もしない日本人

円安ドル高が進んでいます。日本経済新聞電子版によれば、ドル円は1998年8月の円の安値である1ドル=147円64銭を下回り、19990年8月以来の安値水準に到達したそうです(図表を元記事で見る)。

安くなっているのは円だけではなく、ドルの独歩高という側面もあります。

いずれにしても、円の価値がドルに対して下落しているのは事実です。

最近海外に出かける人が増えたせいか、海外の物価に驚く日本人も増えています。

ハワイでは、カップヌードルが700円、お店でラーメンを食べたら3000円といったSNS上の投稿も見かけました。

このように円安を嘆く日本人は多いですが、それに対する具体的な対策を考え実行している人はあまり見かけません。

円の価値が今後も下落すると思うなら、下落するものを保有し続ける必要はありません。円資産から外貨資産へのシフトを進めるべきです。

ネット証券で外国株に投資するインデックスファンドを買うのは誰でも簡単に始められます。また少し勉強すればFXで外貨の買いポジションを保有したり、さらには海外不動産に投資するなど、方法はいくらでも見つかります。

「やるかやらないか」だけの問題です。

外貨投資を始める人が増えてはいるものの、日本人全体の金融資産は相変わらず日本円に偏重しています。円安が進めば進むほど、日本人の保有する資産の価値は相対的に下落していきます。

円安に限らず、危機に直面すると、それに真正面から対応しようとせず、危機から目を反らし、それが過ぎ去るのをじっと待つ。これが日本人の行動特性です。

今回の円安は日本の低金利要因の1つではありますが、その裏には日本の非効率で生産性の低い産業構造や、少子高齢化による労働人口の減少、規律の取れない財政の問題など、複数の根本的な要因があるように思います。

とすれば、円安という危機は、過ぎ去る事はないでしょう。

危機から目を背け、それが過ぎ去るのをじっと待つのではなく、それにどう対応するかを考え、すぐに実践すべきです。

Motortion/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。