先般、日本で働いている中国人のビジネスマンと話をした。
40代前半の彼は日本で10年以上働いていたが、今の勤め先を辞めて中国本土にいる友人と会社を設立するとのことだった。
「安定した会社で10年以上働いてきたのに、今から起業をするのですか?」
「今の職場では自分が成長できないと感じました」
「成長できないと感じると会社を辞める人が中国には多いのですか?」
「多いと思います。中国の大手企業に就職してもマネジメントクラスになれないなら、起業を選ぶ人が多いです」
「日本では、生活の安定を第一に考える人が多いのですが、ずいぶん考え方が違いますね」
「周囲の日本人を見ていると、会社や上司の悪口ばかり言っています。不満を溜め込みながら働いているのが不思議でなりません。確かに、不満を持ちつつ働いている人が日本には多いです。私がサラリーマンだった時も同じでした」
「起業するのが怖いのでしょうか?」
「そりゃあ、大企業に勤めているのに比べればリスクが高いですから。自分の成長を諦める方がリスクが高いと私たちは思っています」
「ところで、子育てはどうするのですか?」
「私たちの親世代が子どもの面倒を見てくれます。夫も妻も働きます」
「父母たちと暮らす、つまり三世代同居も多いのですか?」
「別々に暮らしている人もいますが、同居している人も多いです」
「今の日本じゃ、三世代同居はとても難しいです」
「中国は遅れているのでしょうかね~(笑)」
「決してそのようなことはないと思います。子育ては今の日本で大きな問題になっています。ただ、親と同居することに抵抗があるのです」
「それじゃあ、夫婦それぞれが一生懸命働けませんね」
「だから、ワークライフバランスが重視され、転勤をなくしたり在宅勤務を推進したりしているのです」
「自分の成長よりも安定とワークライフバランスを求めていたのでは、豊かな生活を維持できないのではないでしょうか?」
「自分の成長を諦め、リスクをとらず、安定を求めた結果、日本人が貧しくなってしまったのかもしれません・・・」
「それはわかりませんが、私には自分の成長に結びつかないルーティーンワークを繰り返すのは我慢できません」
彼の考え方が典型的な中国人のものであるのか、それとも彼独自のものかはわからない。
しかし、彼のような考え方を持った人が世界中にたくさんいるとしたら、日本人はますます貧しくなり「親の時代は良かった」と嘆くことになりかねないと不安になった。
編集部より:この記事は弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2022年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。