GDPが映す日本経済の近未来:50歳以下にはあまりにも厳しい社会

7-9月期の日本のGDPが発表になりマイナス1.5%成長となりました。私が気になっているのは今回のマイナス成長の話ではなく、ほとんどゼロ%を軸にその上下を行ったり来たりしている日本の経済成長そのものを懸念しています。

日本のGDPが年間で500兆円を超えたのは2004年。7-9月期を季節調整を含めた年率換算すると543兆円。つまり18年で40兆円しか増えていないので単純平均で年率0.4%成長、実際はもっと少なくなります。しかも2016年にGDPの計算方法を変更して研究開発費などが上乗せになり、国際基準と合わせたこともあり、30兆円ほど計算上の上振れが起きています。とすれば我々はほぼ20年間、成長なし、と言ってよいでしょう。

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もちろん、以前、このブログでも申し上げたようにGDPは経済測定のごく一部の方法であり、それが体を表す全てではありません。GDP否定論もあるわけでそれだけでもって判断はするつもりはありません。が、バブル崩壊後、30年間も言われた「昇らぬ太陽」は今後もまだ見ることはないのでしょうか?

幸福度と経済は一緒くたに出来ません。しかし、給与所得者にとって毎年少しでも給与が上がると嬉しいように一定の右肩上がりは期待するものだし、年齢と共に「いつまでも若者のような生活もできない」という気持ちもあるでしょう。つまりライフスタイルのクオリティを少しずつ引き上げたいわけです。私はこれをフローとストックの測定相違と考えています。

フローの尺度が有効なのは勤労世代である20-50代でこの世代は所得の上昇による生活水準の向上が家計の主軸であり、幸福度が増します。ところが60代から上になるとストックが主たる測定基準となり、一定の貯蓄額と期待しうる年金所得があることでどれだけ安定した生活ができるかが幸福度の尺度となります。

そんな中、現在は賃金上昇率より物価の方が勝るため、実質的には貧乏になっていきます。当然、リタイア層も年金が上がらないので実質収入は下がります。しかも所得不足を金利収入でカバーしようとしても金利はそもそもほぼゼロの国です。では投資はどうでしょうか?残念なことに日本の株式市場を1年というスパンで見るとレンジ相場になってしまっています。要はGDPが成長しないのと同様、日経平均も全然成長していないのです。言うまでもなく投資信託に預けている人もさっぱり増えないということになります。

日経平均を今年の初めから見ると29000円と25000円の間にほぼ収まるのですが、特に26000円から28000円のレンジの期間が長いのです。かなり無茶なこじつけをするとGDPゼロ成長とした場合、27000円が収まりどころが良い株価水準ということになってしまいます。これでは来年3万円越えがある、とは言いづらくなります。株価が成長しないということは海外からの投資も滞ってしまいます。

今、外国人観光客が増えてきて安どしている経営者も多いことかと思います。経済的には観光客増→学生増→外国人労働者増→海外からの投資増という流れが期待される形です。ところが海外で指摘されるのは少子高齢化が進む日本への投資の躊躇であります。よって一番期待したい海外からの投資は以前ほど期待できなくなってきています。

子供の数は今年、80万人割れとなりそうです。1973年生まれは200万人を超えていました。今の49歳の方ですね。ではその49歳の方の総数が50年後に半分以下になると想像してみてください。街のスーパーマーケットも飲食店も半分以下で足りてしまいます。そもそも従業員もいないでしょう。これが実態です。

今、50歳より年齢が上の方も日本経済全体で見れば真綿で首を絞められている状態ですが自分のお財布を頼りに年金収入も確保している限り安定を維持できるので「今の日本で何が不満なの?」ということになります。が、50歳以下の人たちには経済の収縮というあまりにも厳しい社会が待っているのです。

もちろん、少子化問題は日本だけではなく、先進国や東アジアの共通事項です。その中でカナダ政府は現在の年間40万人の移民受け入れ数を2025年に50万人に引き上げると発表しました。人口の1.4%を毎年増やしていくのです。これは何を意味していると思いますか?そう、人口争奪戦なのです。

これが先進国の新しい経済政策でありエンジンなのです。もちろん、50万人には難民も含まれていますが、基本は若い将来ある高学歴者です。カナダにある大学などを卒業すれば移民になりやすいのです。かつてカナダは経済移民と称してお金でビザを買うようなスタイルも流行ったことがありました。今はとにかく優秀な若者をカナダで育て、カナダで収穫するプログラムなのです。

日本は人口が多すぎたから多少減るぐらいでもよい、という意見もあります。1億2千万が8千万人に減っても問題ないと豪語する人もいます。が、確実に言えるのは日本は中小企業が99.7%であり、ほとんどが国内経済(内需)に依存しているのです。人口減はそれら財務と経営基盤が弱い中小企業を吹き飛ばすのです。そして政府部門は税収が十分でなければ政府支出が追い付かなくなります。

大手企業はITや新技術に多額投資をすることが可能ですが、それで国民が食べていけるわけでもありません。企業の業績と国全体の富は違います。カナダは人口密度がスカスカだから長い時間をかけて人口を増やしています。日本は人口密度が高いからそんなことは逆立ちしても考えないのですが、そもそも高人口密度を前提にした経済設計だということ、今後、低人口密度に移行するとしてその移行費用をだれが負担するのか、と考えると個人的には好む好まざるにかかわらず、高人口密度経済を維持するメリットはあるのではないかと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月16日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。