スウェーデンは2020年の3月には義務教育の学校を閉鎖しないことを発表しました。またその後、ロックダウンもしませんでした。
その頃から筆者は若者の生活を守れるのはスウェーデンしかあり得ないと考えており、スウェーデンの対策が正しいと訴えてきました。ところがそのことをFacebookに書いても情報系の教授達からは「スウェーデンが成功するかは分らない」「スウェーデンはロックダウンしないからこんなに被害が出ている」などと反発されました。
スウェーデンで実際に学校閉鎖やロックダウンしない結果、大変なことが起きたのでしょうか? またマスクもエビデンスが無いとしてしませんでした。日本との比較も混じえながらグラフを見ていきます。
スウェーデンでは2020年4月5月に確かにパンデミックがあったが、ロックダウンやマスクはしなかった
- しかしその後は例年の死者の最低値付近かそれ以下で推移
- 11月と12月には第2波も同じ
グラフは横軸が日ごとの時間推移で縦軸が100万人当りの死者です。赤い線が新型コロナ死者を示しています。確かに2020年の4月と5月のスウェーデンの死者は日本に比べると膨大な数となっています。
青い線は他の死因での死者も含めた全死因死者を示しています。この線もやはり例年よりも高くなっています。水色で塗った領域は2015年から2019年までの同じ時期の最大と最小の範囲を示しており、この領域よりも青い線が高い位置にあると例年より死者が多かったことを示します。特に水色の領域の上に白い空白部分が見えて、更にその上に青い線があるところは、例年より非常に死者が多かったということを示しています。この観点から見ても2020年4月5月のスウェーデンの死者は多かったこといえるでしょう。
しかしその後は、ほぼ水色の領域の下に青い線が見えます。これは例年の死者の最低値付近かそれ以下で推移していたことを示します。
2020年11月と12月には第2波が来て、新型コロナの死者が増え、それに伴い全死因死者が例年より増えていることが分ります。しかしやはりその後は例年より低い水準で全死因死者が推移しています。
2015年からの視点:スウェーデンの2020年4月5月以外は平年並みかそれ以下
- 一方で日本は2020年の全死因死者は例年より少ない
- 逆に次の年の2021年は死者が例年以上、2022年も
次に開始点を2015年からとしてグラフを見てみます。スウェーデンの下に日本も並べてみます。上のグラフでやはりスウェーデンの2020年4月と5月の全死因死者は多いといえるでしょう。しかし11月と12月の死者に関していえば同程度となっている箇所が2018年以前にもあります。
一般的に冬は寒さや感染症などの影響で人が多く亡くなります。2020年の11月と12月の死者は、時期的には例年より2ヶ月ほど早まっていますが、2018年以前の冬と同程度であったといえるでしょう。
一方で下のグラフ、日本は新型コロナが発生した2020年の全死因死者は例年より少なくなりました。年々死者が増加していた中で特異な出来事だったといえるでしょう。しかし逆に次の年の2021年は死者が例年以上になってしまいました。
よくよく考えれば新型コロナによって死者が増えるということはあり得ません。これはヒトの死亡率が100%だからです。新型コロナによって引き起こされるのは一時期に死者が集中するという現象です。
スウェーデンは毎年1月から3月ごろの死者が多いのですが、2019年と、2020年の新型コロナ直前の1月2月は暖冬の影響で亡くなる方が少なかったのです。2020年の新型コロナ死者の多さはその影響もあったと推定している論文も発表されています。
執筆者はスウェーデン人の研究者だけでは無くノルウェー人の研究者も含まれています。ノルウェーの研究者も含めた結論は、スウェーデンのようなマイルドな対策でよかったのでは、ということです。
1980年からの視点: ヒトは冬に多く亡くなるというのがよく分かる
- 1989年から1990年代にも新型コロナ並みの死者
- 統計局はコロナ被害はその頃のインフルエンザと比較して同程度と発表
更に1980年からの死者推移を見てみます。冬に人が多く亡くなるというのがよく分ります。データは国連からと2000年以降はヨーロッパを中心とした死者推移データベースから取得しています(ところどころ抜けているのはデータに抜けがあるためです)。
1989年から1990年代にも新型コロナ並みの死者が出ていることが分ります。実際、スウェーデンの統計局はその頃にインフルエンザで大量の死者が出ており、新型コロナ第一波の死者よりも全死因でみると多かったと述べています。
コロナ被害はインフルエンザと比較して同程度という発表をした国は筆者はスウェーデン以外に知りません。
1980年からの視点:スウェーデンと日本を比較
- 日本は新型コロナ死者が少なくても人口当り全死因死者が増加
改めてスウェーデンと日本を比較します。スウェーデンの場合は、100万人あたり日ごとの死者が、1980年には30〜40人だったのが20〜30人になり、新型コロナで一時的に40人になりました。
一方で日本は日に15〜20人だった死者が高齢化の影響で今では30〜40人です。新型コロナの被害をほとんど受けなくても死者がどんどん増えている状態です(なお日本で1箇所だけ突出して高いところは、東日本大震災のあった2011年3月です)。
200年間の視点:スウェーデン
- 100年前のスペイン風邪には遠く及ばず
- 小規模パンデミックに遭ったが大規模インフォデミックは防いだ
スウェーデンには死亡者数や死亡率データが200年分近くあります。グラフの横軸は時間推移で、1835年からの年ごとに、人口当りの死者数を縦軸で示しています。
グラフを見れば、今回のパンデミックは100年前のスペイン風邪には遠く及ばず、1968年の香港風邪や1988年の北京風邪程度であったことが分ります。流行が収まった後、むしろ死者が減っているところもそっくりです。そのときもロックダウンしないと人が沢山死ぬと騷いだのでしょうか?
スウェーデンは、ロックダウンをしないマスクもしないという緩やかな対策で、一時的に死者は集中したものの、生活に制限は少なく、3年を通してみれば死者数は例年と変りません。2022年2月には対策の推奨がほぼ無くなり、入国の制限も4月には一切無くなりました。日本人も、PCR陰性証明もワクチンパスポートも必要とせず、入国できます。スウェーデンと日本、どちらの対策が優れていたのか、将来どうなるのか、国として先行きが厳しいのはどちらか考えてみて下さい。