電通は解体的出直しを:儲け至上主義の広告代理店の未来

サッカーワールドカップ、日本が優勝候補の一角、ドイツを下したことで淡い期待が生まれています。サッカーを語るつもりは毛頭ないのですが、日本人の特性にお祭り好き的な性格があり、ムードが好転すると信じらえないほどの力を出すことが多いのです。

オリンピックでもフィギュアスケートでもマラソンでも突然驚くべき成果が飛び出すのはメンタルとプレシャーによる縮みから伸びに変えられるかではないかと思います。日本全体が明るいムードのなることはウェルカム。頑張ってもらいたいです。

では今週のつぶやきをお送りします。

市場は年末ラリー期待

冴えない株式市場でしたが最後のひと月ぐらいは花が咲くのでしょうか? 希望的観測ですが、咲くように見えます。理由は悪いニュースが消化されつつある点です。悪役だった仮想通貨取引業者FTXの倒産で連鎖破綻も相次ぎましたが落ち着きを取り戻しつつあります。最大手バイナンスが20億ドルの基金創設を検討するなど市場の健全化、安定化にむけた改善が進めばプラスでしょう。またマスク氏のツイッター社のガバナンスも不安材料の一つでしたが解雇のピークは過ぎています。

ブラックフライディのセールは昨年比3-9%程度増と予想されており消費のダメージは少ないのではないかという声もありますが、売り上げが伸びたのはインフレで価格が上がったことが主因でしょう。ただダメージは軽めで収まるかもしれません。中国が景気支援策で預金率引き下げをしたこともプラス。また株価指数が5割も下落した香港市場がチャート的に底打ちが見えてきたこともあります。もっとも中国の厳しいコロナ対策が経済に与える影響は未知数です。

最後に東京市場ですが主要市場では一番期待できるかもしれません。原動力は三菱商事の初の利益1兆円越えの可能性を含む商社の稼ぎっぷりでバフェット氏も買い増したほどです。マザーズ市場も6月に底打ちしてから3割以上回復しています。市場の信頼を勝ち取れるなら勢いが出るかもしれません。ただ、先日申し上げたように内需に限界があるのが東京市場の特徴。結局、商社のように海外とのビジネスで稼ぐ企業に頼らざるを得ないというのが悩ましいところではあります。

電通は解体的出直しを

広告代理店は学生には未だに響きが良い業種のようですが、往々にして入社してからはボロボロになる人が多いのもこれまた事実。私のクラスメートは人生を電通で走り切ったのですが、この40年弱、彼の疲れ果てた顔を時々見ていると精気を吸い取られたなと思ったりもしたものです。社内自殺者が出るのは社風そのものが生み出す緊張感でしょうか? 逆にそこまでしたからこそ、業界の覇者であったわけです。

bennymarty

ただ、あまり聞かないのは電通出身者が転職後に成功街道を突っ走ったケースです。優秀な人材を輩出する会社は社員が生き生き成長路線を歩める環境を提供したからこそ、どこの会社でも通用できるものです。とすれば電通は社員を使い倒すのがお得意なのかもしれません。

今回五輪談合の仕切り役が同社ではなかったか、という報道が出ています。いわゆる業界の仕切り役はどこの世界にもありました。例えば私がゼネコンにいた時の談合の仕切りは飛島建設だったし、音楽業界はジャニーズ事務所のチカラは圧倒してました。両社とも過去の話です。仕切り役はもう必要ない時代です。

広告代理店という仕事は少しずつ立ち位置を変えていくことになるでしょう。大規模イベントなどは確かに彼らの存在は意味があるし、コーディネーションの出来がイベントの成否を左右します。一方、企業の広告戦略はマスからよりターゲット型になっていく中でどのツールが最も効果的かその経済計算は極めて難しいものです。

私も広告を代理店と打ち合わせ、機関銃のように打ちまくったこともありますが、全部外れたこともあります。企業がもう少し目覚めれば広告代理店の位置づけも変わるでしょう。儲け至上主義の電通は解体的出直しが必要です。

四半期開示問題とNISA恒久化

ほぼ同時にでたこの2つのニュースはある意味、背反しています。四半期開示は現在金融商品取引法に基づくものと東証が設定するルールの2つあるのですが、これをまず東証のものに一本化し、更に将来的にその開示義務すら撤廃する方向だというのです。政府の言い分は適時開示制度があるからよいだろうと。これは政府が投資家のポジションを全く理解してません。素人の極み。そもそもこんな奇妙な改変をしようというのはこれまた首相の奇妙な企業を慮る気持ちから出ているものです。

NISAの恒久化は今まで時限だった非課税の投資を日本人の財産形成の一環とし、年金だけでは足りなくなる生活費などを蓄える道筋を作るものです。そもそもNISAを時限化していたことが国際的にみて、全くお粗末だったのでようやくまともになると個人的にはほっとしています。

ただ、私はこれも不満。というのはNISAの対象が投資に限られているからで銀行の定期預金などを入れるべきだと思います。日本人は投資に対する意識がまだまだなので預金もそれにいれることで貯蓄をして将来に備えたい人を助けるべきでしょう。預金利息の節税など意味がないという意見があるのは分かっていますが、まずはNISAの意味するところを理解してもらうところからスタートすべきです。

政府は国民に「もっと投資を」と折に触れてずっと言い続けています。近年はお金を学ぶことが学校教育でも取り入れらている中で投資の最大のキーは定期的な業績開示です。小売店は月次の売り上げを公表するところも多いのですが、コストが見えなければいくら売り上げが増えても意味がないのです。

仮に四半期開示が無くすことで投資ポジションを長期化させようというなら日本からマネーが流出するのがオチ。つまり東証はガタガタになります。この辺り、岸田首相は理解をしているのか、私には意味不明であります。

【後記】
平日の移動はできる限り公共交通機関のみで自分の車を使うのは現場に行くときぐらいです。理由は運転するのが面倒だからです。移動している間も仕事なりメールチェックなりしたいので電車バスが圧倒的に便利です。ところがバスは地元の人でも嫌がる人が多いのです。時としてあまり乗り合わせたくない人に出くわすからでしょう。この後記の意味するところが日本の方には理解できないかもしれません。

東南アジアでもバスなど公共交通機関は乗る人、乗らない人が分かれる国が多いでしょう。日本はバスになんの疑念もなく乗れるという意味で本当に平和で平等な国ということです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月19日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。