厚生労働省の10月の毎月勤労統計調査の速報によると、物価上昇を加味した実質賃金は前年同月比2.6%減少となり、7カ月連続のマイナスとなりました。マイナスに転じた4月以降で2%超となったのは初めてだそうです。
基本給や残業代などを合わせた現金給与総額(名目賃金)は10カ月連続のプラスとなっていますが、物価高に賃金の伸びが追いついていない状況が続いているようです。
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物価が上がれば税収もアップし経営も楽になりますが、でもなにかが忘れ去られています。
賃上げは熱を帯びてきており、岸田首相も春闘に期待をしているそうです。
しかし、名目賃金すら増えていない人たちが実は多いという指摘があります。その指摘の主はかのトヨタ自動車の社長・日本自動車工業会会長の豊田章男氏です。
自動車業界ですら、(賃上げの)「流れ」の中に組み込まれているのは、私どもがよくいう「(自動車関連産業)550万人」のうちの約3割の人々であって、残りの7割の人たちは現在「話し合いの場」にすら立てておりません。(日本自動車工業会記者会見 (11/17)
トヨタ社長が発した「労働組合の加入率は全労働者の中でも2割もおらず、その中で春闘やって賃上げって報道して意味あるの?(編集部意訳)」というマスコミの報道姿勢への要望も、とても意味深長ですね。
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また、安定と賃金はトレードオフなのではないかという見方もあります。
労組は結果的に賃金の上昇を抑制してしまうという指摘もあります。
そんな中で、若者は懸命に合理的に行動しているようです。
車離れの原因は、安定が足りないからなのか安定している人と不安定な人と断絶からなのか。
結果、とても悲しいことが起きています。
雇用にこそ日本のほんとうの問題が潜んでいるという不都合な事実は、あまり指摘されませんね。