なぜルイ・ヴィトンは人気を高め、ボートハウスは凋落したのか?

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日本経済新聞電子版の報道によれば、ブルームバーグ社の世界長者番付「ビリオネア(億万長者)インデックス」でLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのベルナール・アルノー会長兼CEOが、テスラのイーロン・マスク氏を超えてトップに立ったそうです。

イーロン・マスク氏が首位から陥落したことが話題になっていますが、私が興味を持ったのはアルノー氏です。アマゾンのベソス氏や、マイクロソフトのゲイツ氏のようなアメリカのテクノロジービジネスとは対極にあるように見える、ラグジュアリーブランドビジネスで、なぜ世界一の富豪になれたのか。その秘密が知りたいと思いました。

アルノー氏は親から受け継いだ事業資産を担保に有名ブランドを次々に買収して、一代で巨大なブランドコングロマリット企業グループを作り上げました。

ルイ・ヴィトン、Dior、ドンペリニヨンなど、誰でも知っていて世界中に店舗を展開するようなブランドを複数展開し、どれもが高収益をあげています。

ブランドビジネスというのは、ブランド価値を維持し、ビジネスとして継続することが極めて難しいビジネスだと思います。

20年前、30年前の有名ブランドのほとんどは、時代の変化と共にその価値を失っていきました。

かつて、日本国内で大ブームになったボートハウスやセイラーズといった伝説のブランドは、今も存在するようですが当時のような人気はありません。

ルイ・ヴィトンは未だに世界の大都市の一等地に店舗を構え、店舗に入店待ちの行列が出来るほどの人気を維持しています。

人気を維持できるブランドと、一過性のブームに終わってしまうブランドの違いはどこにあるのでしょうか?

ブランドとはある種の「幻想」と言うことができます。有名ブランドのビニールで作られたバッグが数十万円で販売され、飛ぶように売れているのは、そこに価値を感じる人たちがいるからです。製造コストを冷静に計算すれば、極めて高額のブランド料が価格に上乗せされていることがわかります。

ブランドビジネスとは、そのブランド料を払ってでも商品を手に入れたいと思う人たちを魅了し続けることです。

LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、その方法をシステマティックに展開できるノウハウを蓄積し、それを様々な買収したブランドに横展開することで成長を遂げました。

LVMHは昨年有名ブランドのティファニーを買収しました。ティファニーは日本人にはお馴染みですが、ブランド価値を上げて更なる高級ブランドに育てあげるのではないかと想像します。

アルノー氏のビジネスはどこまで広がっていくのでしょうか?


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。