ホテルや空港で起こっている「ラウンジ問題」

大手航空会社は、主要空港に自社の「航空会社ラウンジ」と呼ばれる施設を持っています。これは、ビジネスクラスやファーストクラスの利用者が搭乗前に利用できます。

ただし、JALやANAのビジネスクラスラウンジ(ビジネスクラス搭乗者が使える航空会社ラウンジ)は、過去の搭乗実績によって一旦ステータスを獲得すると、生涯利用することができます。

エコノミークラスで搭乗でも、ビジネスクラスラウンジに入ることができるわけです。サラリーマン時代に出張で利用してステイタスを取れば、リタイアしてからもこの特権を享受できます。そんなシニアを良く見かけます。

また、高級ホテルにも「クラブラウンジ」と呼ばれるドリンクや軽食などが無料で楽しめる上位客しか使えない設備があります。

ところがマリオットボンヴォイと呼ばれるマリオット系のホテルの会員でプラチナエリートのステイタスになると、1番安い部屋に泊まってもクラブラウンジが使えるホテルがあります。

どちらの「ラウンジ」も、本来は限定された上、顧客のために提供していたものです。ところが、簡単に入場できる条件を付けてしまうと、利用者が増え激しく混雑するようになります。

航空会社ラウンジは、人気路線の搭乗前になると、空席がなくなるほどの混雑になります。

ホテルのクラブラウンジもクラブフロア利用者以外の利用で食事時になると混雑します。

最近出かけた横浜ウェスティンでは、クラブラウンジの利用時間を2部制にして対応していましたが、入り口に大行列ができ、クラブラウンジはバーゲン会場のような混雑ぶりでした。

このように、ラウンジが混雑するようになると、提供するサービスレベルが落ちていきます。

ドリンクの種類が減り、食事の質が下がり、接客にも充分に手が回らなくなってしまいます。雑然とした雰囲気になって、高級感は消えてしまいます。

航空会社やホテルのラウンジ問題は、収益に貢献する上位顧客に対して必要なサービスが提供できないという深刻な状態になってきました。

顧客からの反発を招くリスクがあるものの、クオリティを維持するために、利用条件を厳しくし、利用者数をコントロールする時期に来ていると思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。