23年の日本株は楽観できるのか?:強気になれないこれだけの理由

日経には恒例の年初株価予想が並び、日経平均予想では多くが年末には3万円を超えるとし、識者の高値平均は31,377円と報じられています。この水準は年末終値26,094円よりちょうど20%高。果たしてそのような楽観は達成しうるか、少し掘り下げてみたいと思います。

東京証券取引所 Wikipediaより

日経平均を予想するには数々のエレメントをどう読み込むかになります。その中で私が思うキーファクターは以下のポイントではないかと思います。

  1. アメリカの金融政策の行方
  2. 欧米景気後退の深さ
  3. 物価高騰は収まるか?
  4. 日銀総裁の交代とその後の日銀政策
  5. テクニカル分析
  6. 為替動向
  7. 資源価格動向
  8. 外国人投資家動向
  9. 投資対象としての日本の魅力的
  10. 地政学的リスク

まだまだあるかと思いますが、これらの組み合わせだけでも考え方は無数にできてしまい、不確定要素を考えるなら答えは簡単には引き出せないとみています。上記10の項目を全部解説していくと膨大な量になるので、いくつかをかいつまんでみます。

まず、アメリカの金融政策ですが、北米物価は肌感覚では収まりつつあるように感じています。くれぐれもご理解いただきたいのは物価は毎月発表される物価指数に対して前年比や前月比で指数がどれだけ相違したかで物価が〇%上がったと表示されます。つまり、23年の物価は既に物価が上がっていた22年の指数との比較であって、1年前から物価が更に5%も6%の上がったのか、という疑念はあります。

現在のNY原油価格73㌦は1年前の原油価格より安く、ウクライナ問題以前の水準です。そして昨年はそこから120㌦、つまり65%も上昇したのですが、今年はそうなるとは思えません。資源価格は現在は全般的に落ち着いています。個人的に商品相場は注意深く見ていますが、今後、若干の上昇バイアスは期待できます。理由は中国の経済対策が進むことで商品価格全体が引き締まるからです。北米の物価指数は原油がピークをつけた22年7月から1年後の今年7月に向け、どこまで落ち着くかこれがキーになります。個人的には秋には4%以下が視野に入るとみています。

では景気後退の行方です。私はやや深めを予想していますが、短い後退期間で終わると思います。つまり、識者と同様、年の後半は景気は回復基調に入るとみています。この予想が正しいとすれば東京市場は欧米に比べて経済が安定し、政治的安定感もあることから年の前半は外国人投資家のマネーが流入しやすく、後半は流出する予想をしています。為替が円高に向かうなら外国人は買い向かいやすいでしょう。

ではどの業種、どの銘柄にマネーが向かうのか、これが難しいのです。識者の注目株がソニー、ダイキン、トヨタ、信越化学、伊藤忠となってますが、これは意味を成しません。この手の銘柄を掲げておけば無難だろうという程度です。私は先日メガバンク株に配当狙いで買ったらどうか、と申し上げました。理由は日銀のポジションにあります。仮にイールドカーブコントロールの更なる緩和あるいは撤廃があれば長期金利が上がり、銀行収益は大きく改善します。また銀行株はいわゆるチャート無視型で非常にアグレッシブに動く癖の悪さがあるのです。

ごたごた書いてしまいましたが、結論です。世界に浮遊するマネーは一旦、日本に向かう、ただし、年央になり北米市場の底打ちが確認できた時点で北米に回帰する。日本株は円高を嫌うので年末にかけて31,000円というレベルまで上昇するチカラはないとみています。また、24年1月の台湾総統選に向け台湾問題が過熱し、年末に向け地政学的リスクが俎上にのればそれはマイナス効果になる、という感じです。

私が23年の日経平均は27,000円あたりと予測したのは識者が言うほど強気になれないのです。私のこういう見解は外れた方がいいのだと思いますが。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月5日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。