トランプは無実だった?:暴かれたロシア疑惑の偏向報道

アゴラ編集部

ニューヨークタイムズで30年務めたジェフ・グレフ氏がコロンビア・ジャーナリズム・レビューに掲載した記事が米国の一部で話題になっています。

計4部に及ぶ長編記事で、グレフ氏はニューヨークタイムズ(NYT)やワシントンポスト(WP)などのロシア疑惑をめぐる報道を批判的に検証しています。

ロシア疑惑とは2016年大統領選でトランプ陣営がロシア政府と共謀を図ったのではないかという疑惑です。この疑惑の発端はスティール文書というクリントン陣営の支援によって作成された怪文書で、憶測の域を出ないものでした。

トランプ前大統領 Racide/iStock

それゆえ、ウォータ―ゲート事件を暴き、ニクソン大統領を辞任に追い込んだボブ・ウッドワード記者は文書の存在が発覚した段階から「ゴミ」であるとしていました。しかし、NYTやWPなどは書かれている内容が事実だという前提で報道を続けました。

だが、トランプ前大統領がロシアと共謀した証拠は出てこず、グレフ氏の記事の冒頭部分でNYTの上席編集長が共謀が実証されなかったことに驚愕している描写がでてきます。

NYTはロシア疑惑をめぐる報道でジャーナリズム界で最大の栄誉であるピュリツァー賞を受賞しています。

グレフ氏はNYTの報道姿勢も批判していました。NYTは2016年10月からトランプ政権の終盤までの間、「消息筋」というぼやかした表現をロシア疑惑についての記事で1000回以上使用していました。

これによって、噂レベルの情報が政府高官の発言と受け止められかねず、ロシア疑惑の信ぴょう性が増長する効果が生まれてしまいました。

また、ロシア疑惑について報じたメディアは既存の報道を覆す情報が出てきても、訂正をしなかった実態も記事中では指摘されています。トランプ氏が悪役であることから逸脱する論調は許されませんでした。

グレフ氏は米国ジャーナリズムの劣化に危機感を抱いたことが今回の検証記事の動機だとしていました。ロシア疑惑をめぐる報道により米国の分断はより深刻になり、報道に対する信頼は歴史的に見ても低い水準にあります。

ベテラン記者からの警鐘に米国メデイアは振り向くのでしょうか?