コロナ禍で気付かないうちに「劣化した」かもしれない日本

4年ぶりにイスタンブールから友人のムラートさんが来日しました。日本の大学でも学んだことのある日本語堪能でとても真面目なトルコの方です。

イスタンブールに旅行中にモスクの前で声をかけられ、初対面ながらランチをご馳走になり、空港まで車で送ってもらったりと、とてもお世話になりました。それから長いお付き合いが続いています。

毎回来日する際にたくさんのお土産を持ってきてくれます。今回もお土産に頂いたスカーフを身に付けて、一緒に記念撮影しました(写真)。

日本だけでは無く、アメリカや欧州でもビジネスを展開するムラートさん。今回の日本滞在では、東京だけでは無く、京都などいくつかの街にいるお客様とも商談をするようです。長期の日本滞在なので、六本木ヒルズにあるマンスリーマンションを借りています。

そんなムラートさんが見た4年ぶりの日本。変わったのは、コンビニの店員さんの笑顔が無くなったこと。そして、若者の間に広がるドライで合理的な考え方だと言います。

大の日本贔屓で、日本人の考え方や行動パターンが大好きなムラートさんにとって、今までの日本人の美徳が少しずつ失われているように見えるのは、残念に思えるようです。

毎日の小さな変化は、日本にずっといるとなかなか気が付きません。職人気質で義理人情を重んじる日本人が変わりつつある背景には、日本人に経済的な余裕が無くなってきたことがあるように感じました。また、人手不足でコンビニなどではアルバイトスタッフが集まらないといった雇用環境も影響しているのかもしれません。

もちろん、ムラートさんの感想が日本の変化を正確に捉えているとは限りません。1人の外国人の短い滞在での経験だけを聞いて、一般化するのは危険なことは承知しています。

また、ドライに割り切って、損得勘定に重きを置く行動パターンは必ずしも「劣化」とは言えません。日本人の貸し借りを通じた曖昧でウェットな商慣習よりも、経済合理的に行動することの方が、優れた点があるのも事実です。

でも、何だか少し悲しい気持ちになりました。

日本人以上に日本的なところがあってとても義理堅いムラートさんとの楽しいディナーはあっという間に終わってしまいました。滞在中に、またお会いしたいと思いました。

photographer/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。