燃え尽き症候群「前」にすべき治療法

黒坂岳央です。

英語で燃え尽き症候群をburnoutといい、日本だけでなく世界で起きている現象だ。

求人情報専門の検索エンジンIndeedがアメリカの労働者1,500人を対象に行った調査によると、回答者の67%がコロナ禍後に燃え尽き症候群が増加したとある。世界中の企業が燃え尽き症候群を解決すべく、ワーク・ライフ・バランスの充実、企業内ジムの設置を含めた支援をするも未だ事態の改善は見られない。

自分は医療関係者ではない門外漢だが、会社員も経営者も両方の立場を経験し、周囲の人間でも燃え尽き症候群に陥った人たちを見てきた視点で思うところを取り上げたい。

kuppa_rock/iStock

燃え尽き症候群は身近な存在?

燃え尽き症候群は会社員に限った症状ではない。大学受験に挑む学生や、フリーランスや経営者にも見られる。

日本で有名なのはいわゆる「5月病」である。大学受験や就活戦線を必死の努力で突破した人が、5月のゴールデンウィーク明けにやる気を喪失してしまい、学校や会社に来なくなったり呆然となって集中力を失うというものである。

また、この現象は小学校でもあるようで筆者の子供の通う学校の教師からは「入学後、しばらくは元気に通ってくれるけどゴールデンウィーク明けから、徐々に疲れが出て朝起きるのが難しくなるので意識的に休ませてあげてください」と言われた。

燃え尽き症候群はとても身近な存在だと思うのだ。

おすすめの2つの対処法

筆者が考える燃え尽き症候群への対処法は2つある。1つはしっかり休む、もう1つはそもそも燃え尽きないことである。

1つ目の休むということについていえば、多くの人は休日の日でもしっかり休めていないということに由来する。会社員なら祝日でも家庭の仕事に追われたり、空き時間にプチ仕事をしたり。また、疲れて休んでいる時にスマホで記事を読んだり動画を見るという行為も脳をさらに疲れさせる。

だから「休む」というとスマホの電源を切って、本当に何もしないことをおすすめしたい。筆者は疲れを感じたら椅子の上で腕を組んで目を閉じたり、時にはベッドで30分寝ることもある。睡眠中は何もできないので一番の疲労回復になる。

「事業者は自分で仕事量をコントロールできるから、燃え尽き症候群なんてないのでは?」と思われがちだが、筆者の知る経営者やフリーランスも燃え尽き症候群で鬱状態になっているケースもかなりみる。自営業者の立場になると、持ち時間100%を仕事など生産的な活動に使ってしまいがちで、ムダ時間を一切許さないという感じになりがちだ。

筆者が知るフリーランスには強烈な疲れを感じたら2ヶ月休む、という人もいる。ヨーロッパのバカンスのような感覚で休むのだが、休暇の終わりには「もう休むことに飽きた。猛烈に仕事をしたい」となるようである。

そしてそもそも燃え尽きない戦略を持ちたい。つまり、燃え尽きる前の段階で戦略的に休むのだ。これは自分自身が取り組んでいることだが、たとえば一日の内で仕事をする時間としない時間をわけるのだ。

去年までは土日含め毎日仕事漬けで育児を終えた後も、寝る直前まで仕事をしていた。だがやめた。これをすると寝付きが悪くなるし、夜遅くは思考が悲観的に陥りやすく心が疲れてしまうのだ。今は夕方以降はメールやLineなどの連絡は意識的に見ないようにして、心身疲労はかなり改善された。会社員の立場だと、昼休みは仕事をしながら食事をとるパワーランチなどをやめ、食後はデスクの上で寝るなどだろう。自分も会社員時代にやっていた。

2022年4月にADP Research Instituteが世界中のビジネスマンを対象に行なった調査によると、無休労働時間がコロナ以降に増えたという。リモートワークで24時間仕事にアクセスできる状況が人々から休息を奪ったかもしれない。戦略的な休息、こそが最善にして唯一の対処法ではないだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。