「東京都心6区」から締め出される日本人

海外からの投資資金が東京都心部の居住用物件に流れ込み、価格が高騰しています。

外国人が東京の都心部の不動産を購入しているのには、理由があります。

まず、円安による相対的な価格の割安感です。そもそも香港、シンガポール、台北といったアジアの主要都市に比べ割安感が強かった東京が、円安で更にお買い得に見えているのです。

また、中国の投資対象としてのリスク懸念が高まる中で、アジアの中での投資先としての安定性が大きな魅力となっています。

写真は、渋谷区北参道にできた新築物件の新聞折り込みチラシですが、80平米程度で価格が約3億円。坪単価は1,000万円を超えています。

ほぼ同じ広さの物件が賃貸に出されていますが、こちらも家賃は月85万円。年間で1000万円の家賃を払える人は、なかなかいません。

確かに、この物件は駅からの距離が近く利便性は抜群ですが、この価格になるともう真面目に働いている普通の日本人には手が出ません。

新築物件だけではなく、中古物件も都心部では価格が上昇を続けています。10年前の新築物件は築10年になっているにも関わらず、価格が2倍以上に上昇しているエリアもあります。

では、これからの価格はどうなるのでしょうか?

新築物件は、土地の価格や建設コストの上昇によって、売り出し価格の上昇が続くことが予想されます。それにつれて、中古物件の価格も上昇していくことになります。

日銀の金融政策修正による金利上昇リスクは、ゼロではありませんが、不動産価格を急落させるほどのインパクトにはならないでしょう。

むしろ、インフレが更に顕在化すれば、不動産価格もさらに上昇する可能性もあります。

居住用物件だけではなく、投資用物件に関しても、今後新築価格が上昇すれば、中古物件も値上がりしていくことになるでしょう。

このままいけば、東京都心6区に住める日本人は、10年以上前の価格の安い時期にマンションを購入した人か、株式公開などで大きな財産を築いた人くらいしか住めなくなります。

東京都心6区は、これから外国人富裕層が住む街に変わっていくことになるでしょう。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年6月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。