ビッグモーターだけではない!企業不祥事が起きる理由

黒坂岳央です。

ビッグモーターの不祥事で大変な騒ぎになっている。事件のあらましは他メディアで散々出ているので解説の機会はそちらへ譲りたいが、このような不祥事はビッグモーター1社に留まらない。

なぜこのような憎むべき不祥事は起きてしまうのか?
我々消費者はどのように身を守れば良いのだろうか?

思うところを述べたい。

ビッグモーターの店舗 同社HPより

企業の不祥事が起きる理由

企業の不祥事は昔からずっと続いてきた。このような消費者を欺く行為がまかり通る理由を一言でいうと「情報の非対称性」があるからである。

情報の非対称性とは、買い手と売り手の間における商品サービスの情報格差のことだ。わかりやすい事例が「産地偽装」である。本来は海外産の商品なのに、そこに国産のシールを貼ればあっさり偽装できてしまう。ものによっては消費者側がそれを見抜くことは容易ではない。特に海産物などは見た目だけでは産地は見抜けないことも多い。口の中へ運んでしまったら証拠も消えてしまうのだ。

その他の不祥事の事例でいえば、賃貸不動産業が多い。いわゆる「客寄せ物件」を多数掲載しておき、見込み客の来店を誘発して「すいません、たった今売り切れました。代わりにこちらはどうでしょうか?」と本来売りたい割高物件を売りつける。見込み客も時間を使って来店までしているので「空手で帰るのはもったいない」とまんまと契約させられてしまう。後は建築業界における偽装工事などで、耐震、免震データを偽装して質の低い物件を高く買わされてしまう事例がある。

利用客側では確認することが難しい情報を、販売者側が強力に握っている場合に不祥事は起きる。そしてそのほとんどは原価やコストを下げて利益を最大化するなど売り手に好都合であり、利用客は本来は望まない割高なコストを支払われてしまうのだ。これはケースによっては詐欺罪が適応される重罪である。

ビッグモーターの事例では、この情報の非対称性は極めて大きい。一般人には車の修理や傷、故障についての専門知識は皆無である。「傷がついているので修理しましょう」と元々なかった傷について言われてしまえば「ではお願いします」と二つ返事で確認なしに申し込みをしてしまう。よほど車に詳しい人でなければ悪事を見抜くことは容易ではない。まさにこの隙をつかれてしまったわけだ。

企業の不祥事を防止するにはどうする?

このような企業の不祥事はどう防止すればいいのだろうか?

方法の1つが第3者機関による監査である。たとえば外部独立組織によりISO認証を受けて品質のチェックを行うとか、会計監査などもその一つだ。企業の決算の正当性を確認するチェック機能をもたせることで、透明性と信頼性の高い株式市場を実現させている。また、最近では食品偽装ができないよう、農作物などの産地情報をブロックチェーンに書き込みトレーサビリティを担保するサービスもあるようだ。

しかし、これをあらゆる業界、商品サービスで行うことは不可能に近い。監査には途方もない手間とコストがかかるためだ。それはまわりまわって消費者の利便性を損なう。現実問題としては、金額の大きい業務や社会的責任が大きい部分でのみ監査は行われ、ゼロにすることは現実的ではないのだ。

消費者が粗悪品を掴まないためには?

それでは消費者側が粗悪品を掴まないためにはどうしたら良いだろうか?

対応策の1つに「高付加価値商品を選ぶ」ということがあげられる。たとえば産地偽装品を掴まされないためには、誰が見てもすぐ分かるような手間ひまかけて生産した国産品にふさわしい外観の大きさや美しさをPRするものを選ぶ。価格は高くても、それに見合うだけの価値を訴求するものを選ぶ。

また、高付加価値商品サービスは一般論としてではあるが、販売者側も高付加価値根拠をしっかり説明するアカウンタビリティを持ち、不祥事に手を染めるインセンティブも持たない。なぜなら仮に不祥事が暴露されたなら長期的な売上は壊滅的打撃を受ける上、そういった商品を求める顧客は目が肥えているので騙し続けることは難しいためだ。「高いけどちゃんといいもの」を誠実に売り続けることが販売者側も得をする構図となるため、消費者側は粗悪品を掴むリスクを低減できるだろう。

「安くていいもの」を求めてはいけない

ビッグモーターの事例など消費者側で見抜くことが難しいものの、一部の粗悪品などの不祥事は見抜くことができたのでは?と思えるものもある。

たとえば国産品、高付加価値を謳う割に、異常な低価格商品がそれにあたる。冷静に考えれば「高品質かつ低価格」は絶対にありえない。販売者側はビジネスでやっているので、赤字を出してでも販売するなどメリットのない行為を続けることはない。ちゃんとしたものを求めるなら、相応の対価を気持ちよく支払うべきなのだ。”一部”の産地偽装の不祥事などでは「頑張って安くていいもの、掘り出し物を見つけよう!」という気持ちに漬け込まれて騙されてしまうのである。

良いものは高く、悪いものは安い。

この当たり前の感覚に持つべきだろう。「安くていいもの」はもう幻想と心得えよ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。