新政権はカタラン語とスペイン語を同一レベルに置いた
2015年から今年5月までおよそ8年間マジョルカ島を中心にしたバレアレス諸島自治州の政権を担っていた社会労働党と他2政党との連立政権はカタラン語の正常化を促進。即ち、同自治州内では公式書面や職員の市民との対話などでカタラン語だけの使用を義務づけたのである。スペイン語の使用が廃止されたわけである。
その弊害はあちこちに見られた。その一番被害を被ったのは公立の病院であろう。医師や看護師にカタラン語で患者へのアテンドを義務づけたのである。その為、カタラン語が理解できない医師や看護師はバレアレス諸島で働くことを敬遠。またこれまでそこで医療活動をしていた彼らもそこから去って行ったのである。その結果、バレアレス自治州の公立病院では医師や看護師が不足するという事態になっていた。
それに対して前自治政府がやったことは、カタラン語の初歩レベルをマスターしていれば継続して病院で働くことができるとしたのである。しかし、この初歩レベルを合格するのはかなり難しいとされている。しかも、果たして患者をアテンドするのにカタラン語の習得がどうしても必要なのであろうか、という疑問も湧いていた。だからの彼らの間でもそれを敢えて勉強しようとしない。なぜなら他の自治州の病院でも職はあるからだ。
またバレアレス諸島は外人の在住者も多い。役場の職員がカタラン語でしか喋ってはいけないという義務もまたバカげている。
医師もカタラン語の習得から解放された
このような弊害を市民はこれまで8年間被って来たのである。だから、5月の地方統一選挙では市民がこれまでの不満を一挙に爆発させた。その影響で、バレアレス自治州や首府のパルマ市やそれに隣接したカルビア市などで政権が国民党とボックスによる連立政権に代わった。
そこで新政権が早速取り組んだのが、このカタラン語の義務化を廃止したのである。これからは公式書面はカタラン語とスペイン語が併記されることになり、また職員もスペイン語で市民との対話も可能となった。カタラン語に通じているのは一つのメリットだということにした。
勿論、公立病院でも医師や看護師のカタラン語での使用義務は廃止された。それによって、彼らが病院から去ることを食い止めるのに役立つはずだ。また、不足している専門医も他の自治州から雇用することも可能となる。
今回の例は、一つのことに執着した政治というのが如何に多大の弊害をもたらすかということを示した一例であろう。