環境保護を理由にサービスを低下させる「ズルい戦略」

旅行に出かけると、地球環境に配慮した行動を意識させられることが多くなりました。

ビジネスホテルに宿泊すると、トイレットペーパーの使い切りにご協力ください、あるいは無駄なアメニティ利用をお控えくださいといった宿泊客へのお願いをされることがあります。

あるいは、最近乗った飛行機では、SDGsへの取り組みの一環として、ペットボトルの水の配布を控えているとアナウンスがありました。

このような企業側からの顧客への依頼の理由は「環境保護」です。

確かにトイレットペーパーが未使用のものでないと嫌だとは思いませんし、歯ブラシや綿棒など使わないものは全員に配布する必要はないとも思います。ペットボトルもリクエストがあった人だけに渡すようにすれば、資源の浪費を防ぐことにはなるでしょう。

ただ、その理由として「環境保護」を前面に押し出されると、何だか都合の良い「建前主義」に聞こえてしまうのです。

裏にある真の理由とは、単なる「コスト削減」なのではないかと勘繰ってしまいます。

もし、環境保護を訴えるのであれば、もっと根本的にやるべきことがあるのではないかと思ってしまいます。

例えばホテルであれば、朝食のバイキングで毎日廃棄されているであろう大量の食べ物。これは、競合ホテルとのサービスレベルの問題から廃止は難しいでしょうが、フードロスの削減には劇的な効果がある改善ポイントだと思います。

また、飛行機のフライトでも搭乗前に食事の選択を任意ではなく強制にすれば、複数の種類の予備の食事を準備する必要はなくなります。あるいは、機内の食事を不要と事前申告した人にはマイルを付与するといったサービスを追加すれば、こちらもフードロス削減に効果的です。

本気で環境保護を考えるのであれば、自分に都合の良い小手先の小技を繰り出すのではなく、戦略性を持った徹底的な改善を行うべきだと思います。

私も無駄に資源を浪費することは、あまり気が進まないタイプです。ただ、何かにつけて「地球環境のために・・・」と理由付けされてしまうと、何だか白けた気分になってしまうのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年10月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。