恨みを買わない「上手な断り方のコツ」

黒坂岳央です。

「断る」という行為は誰しも気が進まないものだろう。せっかく頼んでくれた相手の気持ちにNOを突きつけると、相手は嫌な気持ちにならないだろうか?優しい人ほどNOがいえずに苦しむということが起きる。筆者は昔、NOをいうのはとても苦手だった。お誘いを受けても優柔不断で、断り方が弱いことで引っ張られていき、いやいや参加した先で「やっぱり断ればよかった」といつも後悔することを繰り返していた。

現在は仕事の依頼や売り込み、その他のお誘いを受けることが多くなった。経営している会社では正社員採用の際は面接の場に赴き、時には不採用の判断を伝えることもある。

仕事柄、たくさんのお断り経験を経たことで、今では相手から恨みを買わないような上手な断り方ができるようになった。そのコツをシェアしたい。

tk6/iStock

相手から断る方向へ持っていく

一番いいのは、オファーを出してきた相手側から「やっぱりやめておきます」と自分から断る方向へ持っていくやり方だ。

たとえば「ぜひ一緒にお仕事を!」と熱心に申し込まれることがあってお断りをする時は、「いえ、こちらにメリットがありませんので」みたいなストレートな物言いで断ると、相手はバカにされたと感じてわだかまりが残ったり、対応が失礼だと悪い印象を与えてしまう。下手をすると自尊心を傷つけられたと恨みを買うこともあり得る。そのため、キッパリと「いりません」と言いづらい時は、相手にメリットを提供できないことを冷静に伝えるといいと思っている。

先日も熱心なオファーを頂いたのだが、「御社が希望しているのはこういうことだと思うのですが、現在こういう状況でおそらく期待されている価値をこちらが提供するのが難しいと思います。せっかく一緒にお仕事をしても、お役に立てなければかえってご迷惑をおかけしてしまうので」という趣旨を伝えると自然な流れでクローズできた。

先方に問題があるといわず、あくまで自分の都合で相手が期待するような価値提供ができないと伝えることで相手はオファーする理由がなくなり、自然に相手から話を流す方向へ持っていくことができるのだ。

誰しも断られるのはショックを受けるものだ。しかし、自分から持ってきたオファーを自ら引っ込めるようにすれば、相手から恨みを買うということもない。ビジネス取引だけでなく、プライベートの人間関係でもこの「相手から断らせる戦略」はかなり活用できる。

カチンと来ない「伝え方」が大事

お断りをして相手から恨みを買ってしまうのは、「断るという行為」ではなく「断り方、伝え方」に問題がある場合がほとんどだ。自分が実践しているカチンと来ない断り方のコツをシェアしたい。

1. 即答しない

お誘いを受けたり仕事を申し込まれてお断りをする時は、即答はしない方がいい。

「お願いします」と言われて「いえ無理です」といえば誰しもカチンと来てしまう。そのため、熟考した結果難しいという判断になったという空気を作るために時間を置く方がいい。といっても「忘れられたのでは?」と思わせるほど待たせてはいけない。

2. ネガティブな感情を出さない

どれだけ不快な相手から図々しさを感じる誘いであっても、露骨に嫌な表情を出したり、不快感を示す声色を出すような子供じみたことはご法度である。そこまですると相手から恨みを買う。

よく女性に告白をした男性が嫌そうに断られて自尊心を傷つけられて逆上、みたいな話があるように恨みを買ってしまう断り方は避けるのが賢明だ(そもそも逆上して襲いかかる方が悪いのは明白ではあるが)。真摯な態度で相手の話を最後まで聞いた上でサラッと断るのがいい。ネガティブな感情は出してはいけない。

3. 相手を尊重する

お断りする時は相手は勇気を振り絞って誘ってくれたかもしれない。そのことを考えてあくまで相手を尊重する姿勢を忘れないようにすることが重要である。

「この度は忙しい中でこのような企画を考えてお誘い頂いてありがとうございます」とまずは感謝の気持ちを伝えるのがよいだろう。お断り文句だけでは相手は傷ついてしまう。だからできるだけ柔らかく伝わるクッションを添えることが肝要だ。

「断る技術」が必要なのは日本で暮らしていく場合だけに限らない。自分はアメリカに住んでいた時期や、外国人と働いていた期間があったが、英語圏でもストレートに「NO」とは言わない。 I wish I could go but I already have plans.(ぜひ行きたいのですがもう予定あります)とクッション言葉を添えるのが普通だ。

また、何でもズバズバいいそうなイメージのある中国でも、相手のメンツをつぶさせないよう想是想,可是我估计不能去。(行きたいと思いますが、難しいです)といった表現がある。上手に断れることでムダに波風を立てないようになるだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。