日本経済の正常化の第一歩、銀行復活!

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日本のドラマでは銀行はバブル崩壊以降、悪役であり続けました。「晴れの日に傘を差し出し、雨の日に傘を取り上げる」といわれ、ピシッとスーツを着込んだエリート風の銀行員は実は取り立てに奔走し、乾いたぞうきんを絞っても何も出てこない中小企業の社長に借金返済を迫ります。

一方、銀行もお金を借りてくれてこそビジネスが成り立ちます。常時10万円しか残高がない多くの個人顧客を抱え、維持管理費だけでも膨大な額なのにそれでも耐え忍ぶのは「我が行をいつかは利用して住宅ローンや相続などおいしいビジネスが転がり込んでくる」という期待があるからでしょう。

そんな中、住宅ローンの実質金利が一時期、1.0%を大きく下回っていたのは商店でモノが売れないので大バーゲンセールをしていたのと同じ構図です。「金利、ここまで安くするので借りてください」であります。

ではメガバンクや地銀が勝手に安売りの値札を作れるかと言えば一定の自由度はあるものの基本は日本銀行の金利が基準になります。その日銀は「永遠のハト」と呼ばれ「金利を上げると国内景気が持たない」「政権からお手柔らかに」と囁かれれれば日銀マンも人の子、サラリーマン。「ボク、嫌われたくないし…」となります。

世界の中銀がこの2年、どんどん金利引き上げ競争をしたにもかかわらず、「日本の景気は引き続き脆弱である」と言い続け、大規模緩和し続ける意義を声高に叫び続けました。誰も「本当かい?」と言わないのは低金利が心地よいからです。灼熱地獄より軽井沢の過ごしやすいさわやかな空気を求めます。

しかし日本がこの1年半経験したのは海外物価の急上昇、資源価格の高騰、戦争による制約と市場価格の変化という外圧による衝撃でした。鎖国していた江戸時代なら「へぇ、諸外国は大変じゃのー」で済まされますが、これだけ世界が密接につながる中、金利を上げない愚策を続けたために経済が非常にいびつになってしまいました。

10年物国債の利回りが徐々に上昇したのは「これじゃ、まずい」「日本だけなぜこうなのか?」「日銀は企業に物価高のコストを吸収させた張本人ではないか?」と日銀悪役説が再度首をもたげ始めたことは大いにあるでしょう。

再度というのはバブル期に「平成の鬼平」と称された三重野康氏、早すぎるゼロ金利解除して「世界最悪の中銀総裁」の異名を持つ速水優氏、最近では国会を通すための打算で選ばれたとも言える白川方明氏も不人気で日銀総裁は知る人ぞ知る冴えないポジションなのであります。

が、外圧のおかげで10年物金利が0.8%台から0.9%台になってきたこともあり、メガバンクの収益が好転し、今回の半期決算では思わず唸るほどよくできた決算となりました。みずほは決算上方修正で増配、三井住友は今期利益過去最高に、三菱UFJに至っては半期で前年同期比4倍の9300億円を稼ぎ、通年予想の1.3兆円の進捗率は71%で上方修正は確実です。りそなと三井住友トラストを入れた5大銀行の半期利益の合計はほぼ2兆円となり銀行の大復活となっています。

銀行は経済で言う血液の役目です。企業や家計に資金という血液を循環させるので今までの瀕死の白血病から回復に向かっているわけです。

では皆さんが誰でもお金を借りやすくなるのか、と言えば否です。日本経済に選択の時代が到来します。私はこの予言は断言します。誰でもちょっと起業するという時代からしっかりプランし、特徴を持たせ、会社経営ができるところだけが生き残る、そんなメリハリある時代が到来します。そしてきちんとやる経営者や家計にはお金が回り、怠惰で社会的意義がない企業には寒風が吹くでしょう。

残念ながら日本は行き過ぎた平等主義といびつな企業間競争が長年続きました。この時代がようやく終焉に向かう、そういうサイクルに入るとみています。よって倒産件数は今後、数年間増えるでしょう。淘汰されて、強くなる、その試練に向かう訳です。

銀行はその点では再び悪役になるかもしれません。「そんなに儲かっているならうちにも貸してくれへん?」と言ってももうそんな甘い時代ではない、つまり晴れていても傘は貸してくれません。そうではなく、「将来、雨が降ってもびくともしない」ところに傘を貸してくれる、そんな時代になるでしょう。

日銀は内圧と外圧でゼロ金利政策を終える可能性は大いにあると思います。半年以上前にYCC解除が年内、ゼロ金利解除が24年春とこのブログで予想しましたが、そのスタンスはいまだに変わっていません。植田総裁が近年の日銀総裁では高評価だった福井俊彦元総裁を凌駕し、日銀が日本経済の心臓として十分機能できるようになればあとは筋肉をつけ、強い精神力をつけることで日本経済の正常化は図れると期待しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月15日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。