人手不足はこれからの日本にとっては良いこと

団塊の世代がリタイアする時期に差し掛かることで、日本国内ではこれから人手不足が深刻化していくと懸念されています。

既にその兆候を感じる出来事に遭遇することが出てきています。

近所にある人気のとんかつ店があります。ランチには行列の絶えないお店ですが、夕方にも行列が出来ていました。中を覗いてみると張り紙がしてあり、人手不足でホールスタッフが確保できないので席数を絞って営業しているとのことでした。

いつもは20席近くあるお店が半分以下の席数に減っていて、普段は比較的空いている夕方にまで行列ができていたのです。

あるいは、私の知り合いがイベントの簡単な受付をしてくれる人を探しているけど、時給1500円前後では、スポットでサポートしてくれる人がなかなか見つからないとこぼしていました。

最近はアルバイトのマッチングサイトもあるようですが、以前のようにある程度の時給を出せば、知り合いからあっという間に希望者が集まるという状況ではないようです。

外国人にとっても、円安で日本は魅力的な労働場所では無くなってきています。物価が安く観光にやってきてお金を使う場所としての魅力は高まっていますが、お金を稼ぐ場所とは思われなくなってきています。

さらに、タクシーのドライバーや地方の電車やバスの運転手も足りなくなってきて、稼働できない車や、人手不足からの運休が起こったりもしています。

このような人手不足が続けば、人員確保できないことからビジネスチャンスを逃し、企業によっては人手不足倒産も大げさではありません。日本経済にとって大きなマイナス要因に見えます。

しかし、労働市場の需給がひっ迫すれば、需給関係からの労働賃金の上昇が期待できます。実際、企業の賃上げやアルバイトの時給アップによる労働者の獲得競争はこれから激しくなっていくと予想されます。

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賃金上昇によるインフレで、日本もいよいよ他の先進国と同じような脱デフレのマクロ経済環境に近づいていくのです。

また、人手不足はAIやロボットのような代替物による自動化や省力化のインセンティブになります。それによって労働生産性の向上が期待できるるのです。

人手不足が今までの日本の低生産性と労働賃金の低位安定という状況を変化させる起爆剤になりえるのです。

現に、大手の外食チェーン店では、注文は卓上のタブレットで来店客が入力するシステムが主流になってきています。これなら、注文の取り間違えも無いですし、調理の順番や会計を間違えることも減らせます。

今は人間がやっていることが、数年後には予想を超えるスピードで機械やロボットに代替されていく。そうなれば、日本に対する悲観的な見方も少し変わってくることでしょう。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。