重荷を捨てて「常に身軽」になるメリット

黒坂岳央です。

起業して経営者や投資家とコミュニケーションを取るようになり、大きな成果を出す人に見られる特徴があると感じるようになった。それは例外なく「常に身軽」ということだ。

身軽さは「フットワークが軽い」という表現をすることもあるのだが、「やるべきタスク」が極端に少なく、「やりたいタスク」「自己実現につながるタスク」しかやっていない。話をしてみたいビジネスマンを見つけたら、その場でシンガポール行きのチケットを取ってすぐに出発する、という具合である(実例)。

自分自身、起業直後は毎日駆け回っていたが最近は落ち着いた生活を送っており、基本的に身軽な状態を維持している。不思議なことにギッシリと忙しくタスクを詰め込んでいた時期より、圧倒的に様々なチャンスやアイデアが降臨することが増えた。ミニマリストが流行ったのも、もっと身軽になろうという啓蒙が重荷に疲れる現代人に刺さったからだろう。

今回は「心の重荷を捨てて常に身軽でいることのメリット」について独断と偏見でお届けしたい。

mapo/iStock

メリット1:集中力

昨今、あちこちで集中力の重要性が説かれるようになった。一昔前は、膨大なスモールタスクをパラレルで効率よくこなしていく技みたいなのが受けたが、最近はその逆の風潮だ。スモールタスクは外注やAIによる自動化も増えたことで、より高度で専門性の高いビッグタスクを集中してこなす付加価値の高い仕事が求められるようになったのだ。

集中力は文字通り「力」なので、一点に力のすべてを集中する必要がある。人間関係の悩みや将来不安、雑多なタスクを多く抱えるとその1つ1つにマインドシェアが取られてしまい、大きな力を出すことができなくなる。

だが、身軽になって本来やりたいことではないタスクに力を持っていかれないようになれば、本来攻略するべき重要度の高いタスクに全エネルギーを注ぎ込むことができる。米国大手ITテックのCEOがみな、シンプルな服装で朝から服を選択することに意志力(will power)を使うことを節約するという有名な話も、より重要なタスクに集中力を使うためである。

メリット2:チャンスをつかめる

あれもこれもと多くのタスクを抱えていると、目の前に来たチャンスに向き合うだけの心の余裕を持つことが難しくなる。

自分がサラリーマンをやっていた時はとにかく起業を軌道に乗せることと、出社して仕事でパフォーマンスを出すことにエネルギーのすべてを使っていたので「余剰資金を投資にまわして~」などはほとんど考える余裕はなかった。

会社の確定拠出年金運用について、自社に営業担当がきて説明をしてくれてもじっくり考える気持ちの余裕がなく、「とりあえず損をしなければいいや」と全額日本円貯金を選び続けていた。

現在は身軽になったことで、ChatGPTが流行ったら即日で手を出してあれこれいじりまわして今では仕事でなくてはならないくらい活用している。もしも自分が身軽でなければ「忙しいからまたその内」と先送りしていた可能性はある。

メリット3:余裕が持てる

身軽で暇になると人に優しくなれると思っている。その逆に忙しくて終始、時計を気にする生活だとどうしても精神的に余裕がなくなってしまいがちだ。

サラリーマンの頃は本業、起業活動、育児で24時間常に忙しくやるべきことに追われていたので、電車の遅延が5分出ただけでも内心イライラしてしまった瞬間はあった。(ああ、この5分の遅れで次の乗り換えに間に合わなくなってしまった…)みたいにイチイチ落ち込んでしまっていた。とにかく時間に余裕がなく、イライラしてしまうことが多かったように思う。

今も忙しくはあるものの、「重要だが期日が仕事」ばかりなので、突発的なトラブルなどでやりたいことができなくなってしまっても「まあまた明日やればいいや」と許せるようになり、イライラすることは減って気持ちの余裕が生まれた。対人関係では中高年以降、不機嫌になる人は多くなる印象だが自分は身軽になったことで逆に許す力を得ることができたと思う。

物理的な意味合いの身軽さもある。筆者は旅行には手ぶらでいく。着替えやパソコンなど、かさばる荷物は郵送するからだ。重い荷物を引きずって観光地をまわると体力の消耗が激しく、疲れて楽しめなくなるし忘れ物や落とし物リスクも増える。しかし、手ぶらなら疲れないからたくさん観光を楽しめるのだ。重荷を捨てて身軽になることはメリットづくしなのである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。