電話番号を持ちたくないのは自分だけ?

黒坂岳央です。

誰もが持っているスマホ、本来の機能は「電話機」である。だが電話機能は使用時間の10%に満たず、90%以上はLineやSNS、動画視聴など通話以外に使用している人は多い。こうなるとスマホは実質的には電話機と言うよりモバイルPCに近い。

そしてスマホについてくる「電話番号」を手放したいが、それを許さない社会の要求が筆者の悩みである。スマホは持ちたいし、通話はLineで十分だ。でも電話番号は持ちたくないが持たざるを得ない。そんな状況となっている。

電話番号を手放せる時は来るのだろうか?

maruco/iStock

電話は招かれざる客の入り口

筆者の電話がなる時は、招かれざる客が99%である。

先日、税金の支払いのために銀行間の資金移動をしたら「当行の資産運用をしませんか?」と営業電話がかかってきた。他にも、契約している通信事業者からは「オトクな割引キャンペーンのお知らせ」と称した営業電話。自社サイトの緊急連絡先に掲載したら、筆者と会話したくて興味本位で目的なくかけてくる(現在、電話番号の表示は取り下げた)。怪しげな詐欺まがいの勧誘電話が来る。メールとビジネスチャットがあるのに、緊急性がゼロの内容を自分都合でかけてくる取引先がかけてくる。

もちろん、電話の存在自体は否定しない。家族や友人、ビジネスの顧客とのLine通話は別である。また、緊急性の高い時や口頭でなければ伝えづらい内容は電話でよいだろうし、ビジネス窓口は通話による問い合わせは発信者側を時短する合理性がある。しかし、正直それ以外の営業などの通話にはうんざりさせられることが多い。

もはや電話は招かれざる客の入口になってしまった。できればもう電話番号は永遠に手放してしまいたいというのが本音である。

電話番号を求める社会

しかし、社会生活を送ると電話番号は持っていて当たり前、持たないことは許さないと感じる場面は少なくない。

たとえばフリーメール、SNSなどオンラインサービスのアカウント作成には電話番号の登録が求められる。そうしなければ、botで無限大にアカウントを作る人が現れ、迷惑行為に歯止めがかからなくなるからだ。Eメールは誰でも無制限に持つことができるが、電話番号は簡単には増やせない。だからオンライン上の本人確認のIDとして機能している。

だが本人名義のクレジットカード登録などを義務化すればこの問題は解決できないだろうか?「それをするとクレジットカードを持たない人が困る」と反論がありそうだが、電話番号を持っている時点で大体クレジットカードを持っているし、そもそもITサービスのアカウントは国民全員に無条件の利用権利が与えられている公共サービスではない。実際、不正利用をすればアカウントはBANとなることからも、使用者は一定の規範を求められる。サービスの秩序維持のためにも、クレカ所持のハードルの高さは電話番号所持のハードルの高さとそれほど大きな違いはないと思える。

電話番号は必要な場面はITサービスに限らない。アミューズメント施設の会員登録、ホテルの予約、賃貸物件契約時などありとあらゆる場面で電話番号が必要になる。電話番号を持たないと社会生活は不便極まりない。だが、電話番号を教えると望まざる通話を呼び込むことになる。通信状態をONにしている限り、電話はなる。なんとかならないだろうか?

前払い決済で解決?

契約やサービス利用時に電話番号の登録を求められる理由は、万が一にも後払い代金を取りっぱぐれないようにといざとなれば追跡する目的で取得するのだろう。であれば、前払い決済をすることで登録を回避できないだろうか?

たとえばアミューズメント施設はクレジットカード決済はどうか?カラオケやボーリングなど、何時間利用するかは不確定だがクレジットカード番号を事前登録すれば、仮に客が受付を逃れて帰ってしまっても問題にはならない。高校生など、クレジットカードを持たない相手のみ番号登録を求めればいい。また、ホテル宿泊も同様だ。予約時点でクレカ決済の前払いをして、現地精算を選んだ顧客からのみ電話番号を取得するようにすればいい。

電話番号は厄介だ。これがないと社会生活で大変不便になってしまうが、いざ取得すると様々なリスクを呼び込む入口になる。理想としては全部前払いをするから番号を提出しなくてもOKとなることで、そうすれば電話番号を持たずに済む。

昔は電話がなれば、気の置けない友達からの遊びのお誘いの可能性があってワクワクしたが、最近では着信音がなると一抹の不安しかない。重要な相手はLine通話で十分である。電話番号を持たずに生きられる社会の到来を望む。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。