ファストファッションの新潮流:PRIMARKが描く成長の軌跡

PRIMARK、SHEINも強敵になれない強さ

アイルランドで1969年に生まれたファストファッション企業PRIMARKが依然急成長を続けている。中国のネットファッション企業SHEINも敵になるほどの相手ではないと豪語しているPRIMARKだ。

その激安さに当初驚いたZARAはそれに対抗すべく激安ショップLeftiesを創設したほどであった。

PRIMARKは現在まで世界16カ国で販売している。近くハンガリーを加え17ヶ国になる。同社は依然店舗展開が主体で、ネット販売は僅かに試験的に行っている程度だ。しかも配達はしない。お客はそれを店に取りに行くシステムになっている。

同社は現在世界で439店舗を展開している。2026年までに91店舗増やして530店舗を構えるとしている。スペインに進出したのは2006年。現在まで65店舗を数えるまでになっている。その規模も広がりマドリードにある12店舗の内の2店舗は4500M2と5700M2という広さだ。筆者が在住しているバレンシアにも1店舗あるが、その広さは5000m2。

スペインは英国についで2番目の市場となっている。スペインの場合はこれから中堅規模の都市にまで進出する予定だ。また同社がこれから販売を伸ばしたいとしているのが米国で、年内に60店舗までにする計画だという。

店舗販売に拘るのはネット販売するには単価が余りにも低すぎるからだ

PRIMARKが店舗販売に拘るのは販売価格が3ユーロあたり始まって20ユーロとか30ユーロが中心で、ネット販売だと発送料や返品率による損失を考慮すると、現行価格での販売も難しくなるというのが理由だ。しかもマージン幅が少ない故に利益を食ってしまうという可能性も出て来る。だからと言って、ネット販売は無視できない。

ということからネットで買った商品はお客が店舗に来てもらって商品を引き取ってもらうことにしている。昨年だと粗利率は8.2%。今年は10%まで上げることを期待しているそうだ。(2月17日付「シンコ・ディアス」から引用)。

ネットで購入して商品を店舗まで引き取りに来てもらうことで、お客は同時に店内にも入って行く傾向があるので、販売の可能性もさらに増えるということになる。

大型店舗化にして消費者が必要な全ての商品を手び入れることができるようにしている

また大型店舗を増やす理由には1店舗の中で大人から子供や赤ん坊の服そしてホームファニシングの商品も展示できる。その内の50%は靴下、下着、シャツといった単価の低いものがベースになっている。そうすることによって、一家族の衣類や家庭用品などすべて揃う。しかも、単価がどれでも低いので買いやすいということだ。

このポリシーはZARAなど商品の内容によってそれぞれ独立したショップになっているインディテックスのポリシーとは正反対の戦略である。またスペインの女性タレントと契約してブランド化の展開も始めている。

2023年のPRIMARKの年商はユーロ換算で105億ユーロ。10年前の年商の2倍に成長している。スペインだけに限定すると、15億ユーロとなっている。

残念ながら、日本市場にはまだ進出していない。