令和は年上より年下を敬う時代

黒坂岳央です。

我が国には年上、年長者を敬うという文化がある。学校や会社では1年でも先輩には上下関係を感じる場面がいくつもある。これ自体はまったく否定しないが、昨今のビジネスにおけるスキルについていえば、自分は多くの学びは年上より年下から得る機会が多いと感じる。

これは決して「年上は愚か者で敬う価値などない」と言いたいのではない。年上からも人生の構造や社会の不文律など、長い人生経験から学べる点は少なくないからだ。

あくまで変化の早い時代は先端テクノロジーネイティブから教わる方が、効率的かつ合理的という立場の違いによる優位性に言及しているに過ぎない(また、この主張もあくまで傾向であり、最後は個々人の力量で決まることは言うまでもない)。

Milatas/iStock

若い世代との感覚の違い

YouTube動画は学びの宝庫である。税金、筋トレ、料理、経営論、マーケティング、資産運用などあらゆる番組がプロの専門家がわかりやすく解説してくれている。自分が学びに使っているチャンネルのほとんどは20代、30代の若い世代のYouTuberばかりだ。

また、自分は40代以降になっていくつか教室に通って技術を学んだ経験がある。料理教室、音楽教室、最近では筋トレのパーソナルトレーナーをつけて教わっている。こちらも教師の年代は非常に若く、意図的に狙ったわけではないが20代、30代の先生から教わっている。

若い世代と40代以降の年代の教え方の違いをいくつも感じるが、その1つに彼らは合理性であるということだ。テキストの方が伝わりやすい部分は、技術を言語化して伝え、体を動かすなどの技術については映像で伝えるなど伝達媒体を柔軟に変える創意工夫を感じる。

自分がストレッチポールを始めて使った日、連絡用のLineで「トレーニングでお伝えした通り、肩甲骨周りを伸ばしましょう。具体的にはこの動画が参考になると思います」と事前にトレーニングの様子を動画をとっておいたものを送ってもらった。「これは大変わかりやすい」と感じた。

過去、中高年以降から技術を教わる時は、すべて言語によるものだった。ビジュアルで伝えられた記憶はない。「ここはカンだよ」などと不明瞭に伝えられたことで、身につけるのに苦心惨憺した経験もある。故に年配講師の指導力は本人の言語能力に完全に紐づいてしまう。

だが、言葉で伝えにくいことはビジュアルを活用すれば言語能力に差は出ず、しっかりと伝わる。こうした技術の活用度合いに世代間の差を感じることがあるのだ。また、若い世代は積極的にIT技術を活用している。YouTube動画越しに紹介される有効なアプリケーションやツールは海外由来のものも少なくない。

こうした技術の活用力の違いが、そのまま指導力の違いに現れてしまう。

デジタルネイティブ世代の価値観

また、テクノロジーや指導力の違いだけではない。デジタルネイティブ世代は40代以降の価値観とかなり異なる点を感じる。

これは年代的にある程度仕方がない差になってしまうが、中高年以降はどうしても人生にストイックさがなくなってしまう。今持っている立場をとにかく守りたがり、自分が変化しなくて済む方向に持っているリソースを注ぎがちだ。我が国の政策にイチイチ既得権益や強すぎる規制や保護主義を感じてしまうのも、国と支持者が年を取っていることに関係していると思っている。

だが、デジタルネイティブ世代は若く人生はこれからだ。それ故に必要に応じて、いい意味で朝令暮改の精神を持ってドンドン柔軟に変化する必要性を受け入れている。また、自分が置かれた環境認識力が高いのは、情報感度の高さに裏打ちされているだろう。

本来は年齢を重ねるほど、過去の成功体験を捨てて、今まで持ってきたものを躊躇なく捨てて変化し続ける必要がある。だがこれは感情に強く紐ついているため頭でわかっていても実践することはなかなか難しい。

デジタルネイティブ世代から学べることは大変多い。それは自分自身の生存可能性に直結する。実年齢は若返ることはできなくても、生き方や気持ちはいつからでも若返ることができる。その一番いい方法は、実際に若い人に頭を下げて謙虚に学ばせてもらうことだ。変化の早い令和時代、スキルを授けてくれる敬うべき対象は年上ではなく年下と思うのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。