東京・渋谷にやってきました。日曜日の渋谷はどこもかしこもすごい人!ぶつからないように歩くので精一杯です。みなさんどこにいくんでしょうね。
さて今回のタイトルは「渋谷・トイレめぐり」。渋谷で悪いものを食べてお腹を壊してたわけじゃないですよ?
雑誌「散歩の達人」の編集長・久保拓英さんと一緒に、渋谷のデザイナーズトイレを巡る散歩旅。「旅色」さんが企画したイベントに参加したのです。
THE TOKYO TOILET プロジェクト
この散歩をするにあたり、デザイナーズトイレができるきっかけとなった「THE TOKYO TOILET プロジェクト」をご紹介します。
かつて公共トイレは臭い、汚い、怖いと言われ使いたくても使えない、犯罪の温床になるとも言われていました。そのイメージを一掃し、だれも安心して心地よく使える公共トイレを作ろうと日本財団が区に企画を持ち掛けたのがこのプロジェクトです。16名の建築家がこれに参加し求められた設置基準の中で斬新なデザインを練り上げて2020年以降17のトイレが完成しました。
今回はこのトイレの中から3つを取り上げ散歩するツアーイベントでした。
渋谷の原点・百軒店を抜けて目的地へ
渋谷駅で集合した「渋谷散歩ご一行」は道玄坂を西に進むと渋い店が立ち並ぶ「しぶや百軒店(ひゃっけんだな)」に入ります。賑やかな通りとは一線を画した人影もまばらな商店街ですが歴史ある通好みの店が並びます。
関東大震災が発生したときに甚大な被害が出た上野や浅草などから渋谷などの西部地域に移って商売を始める人が多くいました。それが今日の渋谷の始まりです。東京大空襲ではここも焼け野原になってしまいましたが、徐々に店が戻り「大人の繁華街」として復興を遂げました。
1926年創業の「名曲喫茶ライオン」は百軒店のシンボル的存在でクラシックを聴きながらコーヒーを楽しむ店です。店内での大きな会話も禁止。クラシックの名曲にひたすら耳を傾けながら、創業時から変わらない淹れ方を守り抜いたコーヒーを味わいましょう。
鍋島松濤公園のトイレ
渋谷も繁華街を離れ、高級住宅地の松濤地区に入ります。そこにあるのが第一の目的地「鍋島松濤公園のトイレ」です。
こちらがそのトイレ。知らなければなんかのオブジェでトイレだと思わないですよね。
THE TOKYO TOILETプロジェクトの一環として建てられ2021年6月から供用開始されたことトイレ。見てわかる通り(?)設計は隈研吾さんです。「森のトイレ」と呼ばれ木立の中を回遊できるコンセプトになっています。
鍋島松濤公園は渋谷区内で数少ない池のある公園です。人工的に作られたものではなく今も湧水が出ています。松濤という名はかつてここにあった茶園「松濤園」からつきました。いい水があったことが茶園をつくるのに適していたのでしょうね。
② 代々木深町小公園のトイレ
ここから「渋谷散歩隊」は北上してNHK放送センターの脇を通ります。
NHK、久しぶりにきました。子供が小さいとき「おかあさんといっしょ」を撮影している場所を見学したことがありますが…今も見れるんですかね?
そんなNHKを横目に歩いて着いたのは渋谷区富ヶ谷にある「代々木深町小公園」。代々木公園の西端にへばりつくように存在する小さな公園ですが、ここには設置時に驚愕をもたらしたトイレがあります。
坂茂氏デザインのカラフルな箱のようなトイレ。まぁこの色目だけなら驚くこともないのですが、実はこれ不使用時には透明になって中が見えるシースルートイレなのです!鍵をかけるとスモークが張って中が見えなくなります。
え、そんなの大丈夫なの?と思ってしまいそうですが、シースルーにすることで中に不審者が潜むことを防ぎ、夜は中の照明が周囲を照らして町の安全を確保する役割も果たしてくれるとのこと。犯罪の防止にも役立つとは意外でした。
ただこのシースルートイレ、わたしたちが訪ねた日には常時中が見えない状態になっていました。どうも外気温が低下するとスモークを張る機能がうまく作動しなくなってしまうそうで5月から10月までしか運用しないこととしたそうです。
まぁ、あわててトイレに入って鍵をかけたのにスモークが張らないとなったら絶望しますからね。。。
③ 代々木八幡宮下のトイレ
「渋谷散歩隊」はここからさらに北上して代々木八幡宮に到着しました。今回の散歩コースの北の端です。
ここにあるのは3つのキノコの形をしたトイレ。伊藤豊雄氏の設計です。
男女、それに多目的トイレの入り口が一方向に向かう形になっていることで防犯性を高めるのだそうです。一方向に向かうことで回遊性を高める目的もあるらしいのですが、回遊…するかな。ここも夜は明かりがともりマッシュルーム型の街灯の役割を果たすそうです。
一行はここからまた渋谷駅に戻りました。「谷」とつくだけあって結構な高低差のある渋谷区を南北に往復、歩きごたえのある散歩でした。
トイレをめぐる、という斬新な企画でしたが「建築を巡る散歩」といっても過言ではなく、区内にある他のトイレも廻ってみたくなる楽しい散歩になりました。ただ撮影の際は不審者と間違われないように慎重にしないといけないですね。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。