海外バイリンガル教育は予想以上に日本人生徒に広まっている!

小峰 孝史

マレーシアの首都クアラルンプールには、日本人生徒がバイリンガルを目指して学ぶインターナショナルスクールが数多くあります。

その中の一つ、郊外にあり寮の整った英国系のEPSOM Collegeを訪問し、運営するEDUC8 GroupのMark Lankester CEOにお話をうかがいました。

エアアジアの創業者、トニー・フェルナンデス氏が中心になってマレーシア校を設立

――EPSOM Collegeは英国系のインターナショナルスクールとのことですが、本校は英国にあるのですか?

EPSOM:香港は英国にあり、2014年、2校目の校舎としてマレーシアに設立しました。現在も、世界でこの2校だけです。

――マレーシアに開校した理由は何でしょうか?

EPSOM:私もEPSOM Collegeの出身なのですが、アジア最大のLCC(格安航空)であるエアアジアの創業者として有名なトニー・フェルナンデス(Tony Fernandes)さんが、私の1年上にいます。彼とともに「今後、アジアが経済の中心になっていくと、アジアにもこうした学校が必要だ。」と考え、マレーシア校を作りました。英国校は、英国人の比率が75%で、非英国人向けの枠は25%しかなかったからです。EPSOMの教育を、アジア人が受けられるように、というのが設立の趣旨です。

EPSOMの目指す教育

――EPSOMの教育とはどのようなものでしょうか?

EPSOM:教室で学ぶアカデミックな学習も重要です。と同時に、独立心、規律=ディシプリン、スポーツ、アートなど教室の外で学ぶことも重要です。この両方を育てていくのがEPSOMの教育です。

この教育の成果と言えるものとして、香港大学や香港科技大からFull Scholarship(全額免除の奨学金)をもらえる生徒も出ています。勉強だけでなく全人格が評価されたのだと思います。

――進学先はアジアの大学が多いのですか?

EPSOM:英国系の学校ですからケンブリッジ大学など英国の大学への進学が多いですが、米国やアジアの大学へも進学しています。

ただ、大学の名前だけで進学先を選ぶような指導はしていません。どの大学に進学するかではなく、何を学ぶかという視点から進路を選ぶようアドバイスしています。

全世界から集まる生徒たちに、英国で採用した教師が指導

――先生方は英国の方が多いのですか?

EPSOM:先生は全員UKで採用し、マレーシアに来てもらっています。EPSOM英国本校で教師をしていた人がマレーシア校に来ていることも多いです。

――どの国から来ている生徒が多いのでしょうか?

EPSOM:マレーシア人が約45%で一番多いですが、世界30か国から生徒が集まっています。日本人生徒も約20%で比較的多いです。

幅広い分野を体験しながら、興味を持った分野を深堀していく

――様々な体験をできるプログラムはありますか?

EPSOM:Co-Curriculum Activity(CCA)というプログラムが用意されています。スポーツ、料理、アート、カリグラフィ(書道)、将棋など、様々な分野の技術を体験することができます。

――特に興味を持つ分野があったときには?

EPSOM:生徒が興味を持った場合、その分野を深く学べるようにサポートしていきます。とくに、アート(絵画・立体作品)、スポーツなどは、手厚くサポートしています。

(アート・デザイン教室の入口)

――さきほど、「どの大学に行きたいか」ではなく「何を学びたいか」という視点で指導していくと伺いましたが、将来学ぶ分野については、何年生くらいから絞っていくのですか?

EPSOM:Year9(おおむね13歳)までは全員が広くまなびますが、Year10(おおむね14歳)からは、科目を絞っていきます。そして、大学で何を学んで、どういう職業をめざすのか、考えていくことになります。

学校のレベルを超えたスポーツの設備と指導体制

――スポーツにも力を入れていると伺いました。

EPSOM:とくにテニスに力を入れています。4大大会で10回優勝したセリーナ・ウィリアムズ選手を指導していたムラトグルー氏の設立した、ムラトグルーテニスアカデミー(Mouratoglou Tennis Academy)がキャンパス内にあり、プロレベルを目指せる指導もしています。

――勉強とどのように両立するのでしょうか?

EPSOM:中には、上のレベルの大会に出るために外国の大会に出場する生徒もいます。そうした生徒のため、必修科目をオンラインで受講できるよう、学校も対応しています。

全英オープン(ウィンブルドン)に対応した芝生コートは無いのですが、4大大会の全米オープン、全豪オープン、全仏オープンに合わせたコートサーフェスのテニスコートが校内にあります。

――ここまでのテニスコートを整えた学校は始めて見ました。

テニスの室内コート

EPSOM:ゴルフも3人のプロコーチがいて、校内にコースを整えました。また、サッカーは、今年から、ラリーガ(スペインリーグ)のコーチを招き、ラ・リーガ・アカデミー・マレーシア(LaLiga Academy Malaysia)を開設しました。ただ、テニスやゴルフのような個人スポーツと違い、サッカーチームとして強くなるには少し時間がかかるかも知れません。どのスポーツでも、プロのレベルまで目指したい生徒から、楽しむレベルの生徒まで、幅広い層の希望に応えるようにしています。

寄宿舎で生徒の生活面も指導

――この学校はクアラルンプール市内から離れているので、寄宿舎に住む生徒も多いのですか?

EPSOM:Year9(おおむね13歳)からボーディング(寄宿舎に住むこと)ができることにしています。ただ、面接などしたうえで認められれば、9歳からボーディング可能です。日本人の生徒さんでも、9歳からボーディングしている子はいます。

――市内から1時間程度ですから、親元に帰りやすそうですね。

EPSOM:平日はボーディングして、週末はクアラルンプールなど親元に帰る子もいます。約2割がこのパターンでしょう。でも、最初は親元に帰りたがっていた子が、だんだんボーディングが楽しくなって、親元に帰らなくなることも多いです。

EPSOMを訪問して

クアラルンプール市内から車で1時間ほどかかるため、子供と一緒に生活しながらインターナショナルスクールに通わせたいという方には不向きかも知れません。

しかし、中高生など、子供を寄宿舎に住ませ、最高の環境のなかで、自立心を養わせたいという方には是非検討して欲しい学校だと感じました。