チヤホヤされて勘違いする痛い発信者

黒坂岳央です。

ブロガーやYouTuberを見ていると、まるで自分が芸能人になったかのように振る舞う人がいる。「ファンのみんな! 寂しいと思うけどしばらく投稿をお休みします!」「興味があるだろうから僕のプライベート旅行を共有します」といったものである。

街なかで頻繁に声をかけられるくらいような100万人以上に支持されている人ならそれで間違いはないのだが、たまにまったくそのような規模の支持者がいないのにもかかわらず、まるで大物であるような振る舞いになっている人を見かけることがある。このケースを特に中年男性でよく見ることがある。裏では「痛い人」と笑われていたりする。

筆者は特定の誰かを笑い者にしたり、下に見たいのではなく、「誰でも発信者になれる現代、気が緩むと誰しもそうなり得るから、気を引き締めるべき」という提言をしたいと思う。そしてこのタイミングでも、自分自身にもしっかり言い聞かせておきたいとも思っている。

koumaru/iStock

人ではなく情報のファンなだけ

記事や動画を出すとどんな人にも一定数の支持者がつく。

多くの人にとって大変有益な情報を出し、見た目も若くて美男美女ということならあっという間に人気者になるし、その場合はコンテンツにはその「人」にもファンが付くだろう。

しかし、ほとんどの場合はそうではない。確かにコンテンツは有益でも人的魅力は別パラメータと冷静に考えておいたほうが良いだろう。

お笑い芸人のようにとにかく面白くてゲラゲラ笑わせてくれるとか、大変優れた頭脳を持っていたり振る舞いがエレガントで深い哲学を持っているといった場合なら、確かに中年のおじさん相手にファンが付くことがある。

だが、多くの場合、このようなケースは当てはまらない。その「人」ではなく、その人の出す「情報」にファンが付いているだけなのだ。見ている側は別にその人自身には全く興味はないのだ。

チヤホヤされると勘違いする

情報発信者になると、一部の熱狂的な視聴者から応援される。この経験は勘違いさせることがあるので、実はかなりリスキーである。

オフ会を開けばサイン、握手、写真撮影を求められ、目を見て「あなたが好きだ」と言われる。発信者になって、こうした経験をしてしまうと、まるで自分が芸能人であるかのように錯覚する人が出ても不思議ではない。自分も好意的な対応を受けた経験があるのでわかるつもりだ。

しかし、たとえ一部の人からチヤホヤされても勘違いすることはビジネスマンとしての寿命を著しく縮めてしまう。繰り返すが、視聴者の99%はその人の「情報」が好きなだけである。勘違いして余計なプライベートな雑談ばかりしだすと、特にその人に興味がない99%の人からは「コンテンツの質が低下したので、これ以上関わっても時間のムダ」と認識され、敬遠される。そのため、決して余計なことはせず、淡々と有益な記事や動画を出し続けるだけでいいだろう。

ビジネスの寿命は「余計なことをする」と縮むようになっている。不祥事、反社会的行為などがその筆頭だが、「痛い勘違い」もその一つだと思っている。痛いと覚められる。「誰も自分に興味はない。有益な話に価値を感じているだけに過ぎない」くらいに冷静に考えて、とにかく良いコンテンツ作りだけに全力集中すべきだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。