現在、国会で議論中の皇位継承問題については『「愛子天皇」は選択肢に入っていない…「旧宮家男子を養子に」という政府の皇族確保策が妙案である理由「男系派vs女系派」が火花を散らす皇位継承問題の終着点』というPRESIDENT Onlineの記事で、旧宮家からの養子案について詳細を解説した。
今回は『結婚後の女性皇族が皇室に残留できる案について、愛子さま、佳子さまの「将来の年収」を左右する…「女性皇族は結婚後も皇族残留案」の抜群のメリット結婚相手の自由度が飛躍的に高まる』という記事を書いたので、ぜひ、ご覧頂きたい。
野田佳彦内閣(2011年9月~2012年1月)のときに、女性宮家という案が話題になった。眞子さま・佳子さま・愛子さまらを当主にした宮家を創設して、夫や子も皇族にしようというものだった。
当時、「彼女たちがもし、疑問がある男性と結婚したいと言ったら困る」と私たちが指摘したら、推進派の人たちは、「皇室の女性たちは常識があるし、宮内庁にも調査能力があるから心配する必要はない」と言った。
ところが、眞子さまと小室圭氏の婚約予定が公表されたあと、小室家のスキャンダルが出た。皇族の良識も宮内庁の調査能力も幻だった。もし、野田内閣が続いて、女性宮家が実現していたら小室圭氏はいまごろ「殿下」になっていただろう。
そこで風向きが変わり、女性宮家案は力を失い、女性皇族のみが皇室に残る「単独残留案」にシフトしたのだから、野田元首相が女性皇族の結婚相手を皇族にしたがるのは、反省がない無責任な態度だ。
対象となるのは、未婚である愛子さま(22)、佳子さま(29)、それに三笠宮家の彬子さま(42)、瑶子さま(40)、それに高円宮家の承子さま(38)の5人であるが、政策的に愛子さま、佳子さまに限定することは考えられる。
それでは、愛子さまや佳子さまがこの制度を利用される場合とされない場合に、どうなるのかシミュレーションしてみよう。
これまでの制度のもとで結婚される場合は、皇室会議の承認などはいらない。眞子さんは辞退されたが、一時金として1億数千万円が支給され、結婚相手の籍に入られる。
このことは、生計費用をどのように支出するかにも関係してくる。皇室を離れる一時金は支給されない。従来、皇族の私生活を支える費用は、各皇族には毎年皇族費(令和6年度の総額は2億6,372万4,000円)が支払われるが、天皇・皇太子とその家族は内廷費と呼ばれる特殊な会計で支払われ、1996年度以降は毎年3億2,400万円と定められている。
令和になるとき、上皇陛下ご夫妻と天皇ご一家のほかに、秋篠宮皇嗣殿下の費用も内廷費から支出する案もあったが、引き続き皇族費の形で、独立して支給することになった。
もし、愛子さまや佳子さまが結婚後も皇室に残られるなら、原則は三笠宮信子さまと同じ1525万円となるが、各宮家の長と同じ3,050万円になる可能性もあるし、その中間の金額とするのかもしれない。ただし、夫や子どもには、直接には支給されない。
お住まいについても考えてみたい。現在、上皇ご夫妻、秋篠宮家、三笠宮家は赤坂御用地にお住まいで、常陸宮は渋谷区に御所を持たれ、三笠宮信子さまはご体調の問題があって千鳥ヶ淵近くの旧宮内庁長官公邸にお住まいだ。
愛子さまや佳子さまが結婚後も皇族のままの場合、赤坂御用地のどこかにお住まいになるか、旧高松宮邸などほかの皇室施設、公務員住宅などを転用する、
いずれにせよ、皇室施設内に夫や子が住むことは問題ない。かつては、女性公務員が民間人の夫などと公務員住宅に住むのは難しかったが、現在では問題ないし、議員宿舎にもさまざまな職業の女性議員の夫が住んでいるから同じことだ。
この単独残留案の対象に、三笠宮家や高円宮家の王女たちを入れるかどうかだが、私は入れるべきだと思う。彼女たちがなかなか結婚されないのは、結婚して宮家をなくしてしまうのは亡き父親の思い出がゆえに辛い、というのが理由かもしれない。そこで、単独残留が可能になれば、少なくともその懸念は解消される。たとえ皇室の一員としては向いていなくとも、生涯の伴侶としては良いという男性を見つけやすくなると思う。
それは愛子さまや佳子さまでも同じで、結婚相手も皇族になる場合よりは、選択肢の幅が広がるだろう。