「トルコの熱気球は危険」という認知バイアス

トルコのカッパドキアでは、観光の目玉の早朝の熱気球に乗ってきました。カッパドキアの奇岩が朝焼けに染まる様子を空から眺める体験です。

ホテルのロビーに夜明け前の4時に集合。バスに乗って気球のある草原に向かいます。

この日は1回目が100、2回目が60の気球が飛ぶ予定と聞きました。

トルコの気球と聞くとチャチな装備で事故が起こる危険な乗り物だと思うかも知れませんが、運営システムを見ていると極めて安全なことが分かります。

予約時に名前、パスポート番号、メールアドレスなどが控えられ、前日までに申し込めばホテルにも間違えなくお迎えが来ます。

気球は5〜6人のチームで運営され、2名が乗船して操縦に当たります。熱を送るための燃料ボンベも4つあって、バックアップがしっかりしていると思いました。

実は気球で1番危険なのは、空中ではなく着陸時です。強風になって流されている時は、真っ直ぐ着陸出来ず、風でゴンドラが横倒しになるリスクがあります。

そのような事態のための対応を上昇する前に緊急着陸時の練習もして万が一に備えます。

この気球ビジネスはカッパドキアの大きな観光資源です。

1つの気球に24人乗ったとして、1日に4,000人近い人が乗船することになります。料金が1人2万円としても1日だけで8000万円。風が強くて欠航する日を考慮しても年間200億円近いビッグビジネスです。

運送用のトラックなどを含めた熱気球の設備は1億円以上と聞きました。また集客や当日の運営などを考えれば、個人が適当に始められるビジネスではありません。

かなりしっかりとした運営主体があると考えるのが自然です。しかも、風が強いと政府から許可が出なくなる安全管理がされています。

アメリカのデータによれば飛行機で死亡する確率は、自動車による死亡リスクは2000倍近くといわれます。

熱気球も以前エジプトで事故があり日本人が犠牲になった記憶から危険だと思い込んでいる人がいますが、実はリスクは飛行機以下です。

調べてみるとトルコの熱気球の事故は直近では10年前に着陸時に2人が死亡した事故があるようです。

「認知バイアス」と呼ばれる思い込みで、素晴らしい経験を知らないまま人生を終えるのはとても勿体ないことです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年7月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。