全国出版協会・出版科学研究所は、2023年(1~12月期累計)の出版市場規模を発表しました。紙と電子を合算した「出版市場の推定販売金額」は1兆5963億円(前年比2.1%減)となり、2年連続の前年割れとなりました。市場ピーク、1996年(20年前)の2兆6563億円から約6割に落ち込んだことになります。
最初に出版の形態を理解しましょう
出版不況といわれながらも出版には根強い人気があります。有名著者が開催するセミナーは満員御礼、気がつけば出版コンサルタント、出版ブローカーを標榜する人たちも増えました。とくにビジネスを指南するビジネス書の市場は活性化しています。サラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなどプレゼンスの高さに注目が集まっているのです。
出版には、大きく分けて3つの種類があります。
- 商業出版(費用は出版社が負担する)
- 自費出版(費用は著者が負担する)
- 共同出版(双方折半で負担。企業出版などもこの範疇)
最初に、著者(著者候補)は商業出版を目指すことになりますがハードルは決して低くはありません。
商業出版は出版社にとって投資になり、数百万円の費用がかかるためです。これを実現するには、投資分の回収と、さらに利益が見込めると思わせることが必要になります。そのため、著名人や実績のある人、ネット発信力の強い人は有利といえます。
最近では、商業出版スクールや出版コンサルが乱立状態にあります。出版スクールは50~100万円程度、出版コンサルは200~300万円程度の費用が掛かります。しかし、出版を保障していないことからトラブルが多いのです。また、出版が決まっても刊行の際に、買取などの条件を出される場合もありますから注意が必要と言えるでしょう。
では、もっともリスクが低い手段はないでしょうか?
出版コンペという手段はどうですか?
精神科医の樺沢紫苑さんは、「ウェブ心理塾」という著者を目指す社会人向けの勉強会を主催しています。代表作でもある、『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)がベストセラーとなり注目されている著者です。
「19歳までに手に入れる 7つの武器」(樺沢紫苑著)幻冬舎
2024年7月20日(土)は、第12回出版企画書コンペが開催されます。つまり本日です。
まず、期日までに企画書を送付します。最初に主催者側の審査員数名が審査をおこないます。数年前までは数十名の応募にすぎませんでしたが、知名度アップにより今年は100名以上の応募がありました。
審査のうえ企画通過者にプレゼン機会が与えられますが、通常は25名程度に絞られます。その後、審査員推薦枠で評価の高かった企画者(20~25名)にもプレゼンの機会が与えられます。
全員がプレゼンを終了したらいよいよ審査になります。イメージは『スター誕生!』に近く、出版社の編集者や出版関係者が面談したい人に採用札を上げます。
過去に参加した出版社は、サンマーク出版、ダイヤモンド社、大和書房、東洋経済、ソーテック社、あさ出版、明日香出版社、集英社、総合法令出版、学研、主婦と生活社、ぶんか社、KADOKAWA中経出版など、ビジネス書の大手出版社が勢揃いしています。多くの出版社と関係を持てることは大きなメリットと言えるでしょう。
この出版コンペは、アゴラ出版道場で講師をつとめた経験もある、城村典子さんも審査に関わっています。
企画の練り方、企画書の書き方、それらを勉強して、企画書コンペに勝ち抜く企画書を書けないとなりません。興味のある方は情報収集をしてみてはいかがでしょうか。次回のコンペは来年の7月になりますが、出版業界を鳥瞰するいい機会になると思われます。
「本を出そう、本を出そう、出したらどうなった?」(城村典子著)みらいパブリッシング
本を出したい人は取捨選択を
「出版プロデューサー」の仕事は著者と出版社のマッチングにあります。多くの出版社とコネクションをもつ人は強いですが、そのような人は出版実績を提示するものです。編集者あがりの出版プロデューサーは多いものの注意をしなければいけません。
出版希望者は大勢いるので、情報が乏しい人に「出版させてあげるよ!」なんて甘い言葉をかけて、お金を搾取する人が増えてきます。選択する側が賢くならないといけません。
いまの時代は、出版しても売れる保証は無いから出版社の判断も早くなる傾向にあります。重版率は1~2割程度、1万部を超えるのは1%と言われています。人から応援されるネットワーク形成も必要になるでしょう。私がいずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれません。
決戦は土曜日!皆さまに幸運が訪れますように。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)