プログラミングを学ぶ子供が賢くなる理由

黒坂岳央です。

先日、小学校低学年向けのプログラミング教室にいってきた。行く前はあまり期待していなかったが、想像を遥かに超える効果に驚いてしまった。

自分は決して教室側のポジショントークをまんまと鵜呑みにし、一時的な興奮状態にあるわけではない。そしてプログラミングは効果が期待できるとはいえ、何も考えなしに教室に放り込めば子供は勝手に成長が期待できるものでもない。英語学習などと同じく、保護者側、本人ともに不断の努力は必要になる。だがうまくやれば大きく伸びるだろう。

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「プログラミング思考」の正体

自分がいった教室は教師が一方的に話をする、というスタイルではない。小学校低学年相手に座学で延々とロジックだけを説いても頭には入らないからだ。まずはデモンストレーションをし、それを見ながら今後は自分の手を動かすということの繰り返しで少しずつ完成品に近づいていく。うまく動作しなければ、上から順に1つずつ命令を確認して、ミスがあれば修正をする。

一連の作業を見ていて、自分の子に起きた大きな効果を言語化したい。まず、非常に高い主体性が生まれた。今回は簡単なゲームを作ったのだが、「ステージ1は少し簡単にして、ステージ2はちょっと難しくしたい。そのために敵の移動速度を高めたい」と具体的なゴールが本人の中で生まれ、それを実現するために必死に操作をする様子が見られた。受け身ではなく、極めて主体的に努力をする。これなら成長は時間の問題であり、都度、引っ掛かりを取り除けばドンドン成長していくだろう。

また、質問の「質」の変化も見られた。通常、小学校低学年は「わかりません」と教師のアテンションを取る目的で質問をする。もう少しレベルアップすると「ここがわかりません」と不明箇所を具体的に言うようになる。今回は、「この敵の動きが遅すぎて簡単なので、もう少し早くするにはどうしたらいいですか?」と聞いているのを見て驚いた。

自分で仮説を持ち、それを質問で伝えることで教師からのフィードバックも自分が求めるものを得られる。それを肌感覚で感じ取ったのだろうと思えた。これは仕事をする上でも重要なことだ。「わかりません」と雑に投げても自分の希望する場所とは見当違いの回答が返ってくる。だが、具体的に自分の望む仮説を添えることで、その回答も自分の求めるものが得られるので質問者側にもメリットが大きい。

創作は人を賢くする

プログラミングに限らず、創作活動は人を賢くする。ここでいう「賢い」とは固定値である計算能力や頭の回転速度などを指していない。そうではなく、必要に応じて能力を活用するのが上手いという意味合いだ。

文章は読むより書くことで熟練する。音楽も聴くより演奏する方が伸びる。野球も見るよりプレーする方が上達する。プログラミングも同じである。他人が作成したアプリをただ使う側になるのではなく、自分で作る側にまわることでコンピューターの仕組みやキーボード操作などありとあらゆる能力を鍛えることができるだろう。

これまで自分は子供にIT教育をする上で課題を感じていた。タッチタイピングやネット検索、クラウドのオフィスソフトは使えるように教育をしたのだが、その先の世界へいけなかった。技術を教えることはできても、「技術の必要性」を実感させることに苦労していた。

だが、プログラミングはそれを解決してくれる。「こんなゲームを作ってみたい」とか「社会の問題を良くするにはこんなプログラミングがいいんじゃないか?」といった課題を本人が自分で作るようになる。大人に比べて吸収力が高い子どもが主体性を持つことができれば、その学習の爆発力は期待していいだろう。

プログラミング終了後、帰りの車移動や夕食、寝る直前までずっと「あれはこうしたらいいんじゃないか」と構想の話をしてきた。よほど面白かったのだろう。こんなハマり方をしたことは今まで一度も見たことがなかった。

今後、ITスキルの重要性はますます高くなる。AIを使うこなすスキルも確実に求められる。子供の内からITに触れておく重要性は理解しながら、ITでやる「ネタ」に困る親は、プログラミングを習わせるのは非常に有効な手段ではないだろうか。自分も今から子供と一緒にイチから勉強しようと思っている。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。