約30年ぶりにコメの取引価格が高騰しています。昨年の猛暑による需給逼迫で在庫が不足したことやインバウンド需要増大が原因とみられています。
その結果、スーパーマーケットではコメの購入制限が始まりました。この需給逼迫は少なくとも新米が本格的に出回る9月まで続く見込みだそうです。
農水省は「全国的に見れば在庫はひっ迫している状況ではないので安心してほしい」とアナウンスしています。
今回は天候不順や日本食の需要が高まったことが原因によるもののようですが、精米して1ヶ月強で商品棚から撤去してしまうスーパーの商習慣も影響しているという指摘もあります。
ただし慢性的に供給が不安定になっています。コメの供給が慢性的に不安定なってしまうのは農協と農水省に根本的な原因があります。こんな時ですら穀物への輸入関税を下げる気はないようです。
農水省は2018年に減反政策は撤回していますが、細ってしまった供給能力はなかなかもとにもどりません。あらゆる業界で既得権が温存されたままというか伸長しています。
農水省や農協は、供給を減らし高米価を維持するため、半世紀にわたり農家に補助金を支給し減反政策を続けてきました。その結果、食料輸入が途絶えると、国民は必要な量の半分しか食べられないような状況になっています。
参照:国民はいつまで農業村の米殺しを放っておくのか? 山下 一仁
実際には農水省はJA農協の利益を優先し、米の減産を補助金で促進してきました。昨年発表された食料・農業・農村政策審議会の「中間とりまとめ」はJA農協の意向を反映しており、米の減反廃止を拒否しています。食料危機が起きると農産物価格が高騰し、「農業界」は利益を得ることはできますが、国民は高い農産物価格に苦しみ、通商交渉も困難になります。
さいきんは日本全体がますます「農業化」しているのではないかと心配になってしまいます。