ポピュリスト政治家の典型:サンチェス首相一家の汚職スキャンダル

ポピュリストの典型、サンチェス首相

ペドロ・サンチェス首相の夫人に次いで、首相の弟ダビット・サンチェス氏も起訴された。夫人も弟も最後はサンチェス首相の地位を利用しての犯罪行為に結び就く。

夫人と弟の犯罪行為を首相自らが知っているはず。何しろ、そのような行為を許して来たのはサンチェス首相本人だ。だから首相としての責務を問われるべきはずで、その責任を取って辞任すべきだ。

ところが、サンチェス首相はそれは報道メディアによる虚偽の報道だとして辞任する意向は全くない。逆に、その一連の報道を行って来た独立系のメディアを批判する攻勢に転じている。

自らが不利な立場に置かれると、それを素直に受け入れることなく、逆にその犠牲者だと称して市民の前に同情を求める行為に転じたのだ。更に、夫人と弟を起訴した裁判官を批判までしている。これは正にポピュリスト政治家の典型である。

所得申告はスペイン以外だが年金はスペインで貰おうとしている首相の弟

首相の弟ダビット・サンチェス氏は音楽家。2017年7月にペドロ・サンチェス氏が社会労働党の委員長に選ばれると、その2週間後にポルトガルと国境を接するエクステマドゥラ州バダホス県の県立音楽学校で11人の候補者を差し置いてディレクターに任命された。同州は勿論、サンチェス首相の社会労働党の支配下にあった。

更に2018年6月にサンチェス氏が首相に就任すると、バダホス県庁はヤング層を対象にした若者オペラのプログラムを創設し、サンチェス氏の弟がそのディレクターに就任した。その為の予算は2019年から2024年まで毎年増えた。

ところが問題は、ダビット・サンチェス氏は県庁の音楽学校に籍をおいておきながら、学校に行って授業することは殆ど皆無。しかも、バダホス県で働いているのであるから所得申告もスペインで行い税金を納めるべきはず。

ところが、スペイン国境から僅か30キロ離れたポルトガル県のエルバス市に住居を構え、そこに住んでいるかのようにしてスペインでの所得税の申告をしていない。そうかと言って、年金はスペインで受給できるように社会保障費は納めるという常識では考えられないモラルに欠けることをやって来ている。

違法行為を追及して行く組織マノス・リンピアスはダビット・サンチェス氏が脱税と資金横領を犯して来たとして提訴。それが法廷で受理され審査の結果、6月7日、バダホスの法廷にて公金横領、不正行為、縁故主義による汚職の罪で彼は起訴された。

貰っている報酬の割に多額の資産を持っているサンチェス首相の弟

更に理解に苦しむのは、県庁が彼に支払う年間の報酬は5万5000ユーロなのに、銀行BBVAの140万ユーロに相当する株を所有している。その上、マドリード、ロシアのサンペテクブルグとポルトガルのエルバスと3軒の家を持ち、クリプトコイン6万3880ユーロ、銀行預金11万4073ユーロを所有しているというのが明らかにされている。僅か、5万5000ユーロの報酬にも拘らず、これだけの資産を持つことなど不可能である。

しかも、税務署はこの不審が報道メディアで取り上げられるまで、いかなる調査もしていないのだ。その理由は明白。彼が首相の弟であるからだ。

しかし、巨額の資産はどこから手に入れたのかというのが疑問視されている。それに関連していると見られているのが次の出来事である。

スペインで第2の航空会社エアーエウロパとその親会社グロバリアと系列航空会社アポリスに総額11億ユーロの救援金を政府は提供した。それが申請から支給するまで短期間で行われた。この迅速な支援金の給与にサンチェス首相の夫人が関与していたというのは明白になっている。

そこに仲介人が一人存在している。ビクトル・アルダマという人物だ。この支援金支給の仲介をしたことで支給額の20%を手数料としてもらうことになっていた。彼はそれ以外にスペイン政府がコロナ禍でマスクの輸入で高額の資金を投入したが、その件も彼は仲介人として介入していた。しかも、彼はサンチェス首相の弟がポルトガルに構えている住居と同じ都市に彼の会社が所在していることになっている。

このような背景から、彼が稼いだ資金の一部が脱税の目的でサンチェス氏の弟に手渡されたという憶測がされている。これからの公判で次第にそれも明白にされていくはずである。