自由時間が長すぎても人は不幸になる

黒坂岳央です。

アメリカ人の時間の使い方を調査した「American Time Use Survey」に興味深いデータが出ている。幸福度と自由時間の長さはきれいに比例するのだが、2時間を超えると横ばい、5時間を超えると逆に低下し始めるというのだ。

「自由になりたい。FIREしたい」という意見を非常によく見る。あまりに忙しい日々を送ると、確実に不幸になることはほとんどの現代人が感じていることだろう。

だが行き過ぎた自由時間もまた、人間を苦しめるため適度な忙しさが求められる難しさがあるのだ。我々はこの難解な問題とどう戦えばいいのか?

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長過ぎる自由時間は不幸になる

まず、なぜ長過ぎる自由時間は我々を不幸にしてしまうのか?この理由について考察したい。

理由1つ目は運動不足だ。自由時間を持て余す立場の人は大抵、運動不足である。ハーバード大学の研究では、人間は運動不足で鬱になりやすいと明らかにしている。その根拠は自律神経の働きが抑制させ、有り余っている体力を将来不安をめぐらせることに使ってしまうためだ。

興味深いことに、鬱患者は部屋で安静に過ごさせるより、軽作業をさせる方が病状が快方に向かうという。会社員は通勤やオフィスの階段の昇り降りなど、意外と運動をしている。会社をやめて自宅で過ごすことが多くなれば、運動不足と余った体力をネガティブ思考に使うダブルパンチでメンタルを不幸に染めてしまう。

理由2つ目は暇つぶしの先に不幸が待っているからだ。これはどういうことか?昨今、誰もがやる暇つぶしといえば記事、動画、SNSなど要はネットの発信コンテンツの消化がメインである。しかし、これが厄介でよほど気をつけないと、基本的にネガティブなコンテンツばかりを消化することになってしまう。

すでに知られている通り、多くのネットの発信は人間のネガティブ心理に訴求するように作られている。「人生はこう生きなければダメになる」「これから地獄のような未来が待っている」「今、こうした悲惨な事件が起きている」このような見てもただ精神を病むだけのどうしようもないもので溢れている。暇すぎると時間を持て余して、そうした害悪なコンテンツばかり見てしまうことになるので、ますます気持ちが塞ぎ込んで「自分の人生はお先真っ暗」という気持ちになる。

暇でも楽しく生きる方法は?

忙しすぎても暇すぎても人間は不幸になる。ではどうしたらいいのか?筆者からの結論は「楽しく過ごせる暇人になれ」ということである。これだけでは意味がわからないだろう。詳しく解説したい。

結論、義務ではないが、生産性は必要とする類の活動をすればいい。たとえば記事を書いたり、YouTubeで動画を作る。テレビ番組ではないので、ネタがなければ無理に出す必要はない。出したい時、出せる時に出す気楽さがある。それでいて共感や応援の声が届くと毎日のハリになるし、見てくれている人の役に立つものを作ろうと楽しく頑張れる。

もちろん、クリエイティブが苦手な人もいるだろう。そこで代案としては「自作」にコミットするのだ。たとえば家庭菜園をして農薬を使わない健康野菜を自分で作る。料理も当然、自分で出汁取りから全部やる。これには手間はかかるし、体力も使う。でもだからこそヒマに効く薬になる。これは節約を目的とした活動ではなく、生産活動そのものを楽しむ目的で取り組むのだ。

また男性の場合は育児に対して仕事以上に本気になるのもいい。現在の自分はこの状態で、ほぼ家事の全て、勉強を教える、習い事のサポートを担当している。平日、土日もやることは無限大にあるので、ダラダラしていたら子供たちの寝る時間が遅くなってしまうのでテキパキと効率的に進める。膨大な家事がドンドン片付いていくのはとても楽しく、ネガティブなことなど考えるヒマはない。その上、大変いい運動になる。自分は育児にフルコミットしたくて、以前やっていた仕事を一部やめてしまったが、今は前以上に適度に忙しくそして毎日充実感がある。

漠然とした不安があり、休日にふさぎ込むことが多い人に勧めたいのは「ネット情報を見ない」ということだ。ネットには胸糞悪い、不安を煽る情報で溢れている。でもリアルは違う。電車に乗って遠くに出かければキラキラと美しい自然が広がっている。ネットを使うと毎日、嫌でも目にする悪口、ケンカ、中傷、暴力はリアルにはない。だから暇つぶしはネットを使わず、リアルの世界を生きればいい。そして適度に忙しくなる活動をすれば不幸になるヒマがなくなるのでおすすめしたい。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。