「資格じゃ食えない」が不安なら起業なんかするな(横須賀 輝尚)

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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『資格起業バイブル』から、再構成してお届けします。

インターネット上の情報に惑わされてはいけない

Q:ネットでは「資格なんて取っても無駄」という声も多いです。努力をしても報われませんか?

現在サラリーマンです。2、3年後に独立起業を考えています。それまでにできる準備として、経営の勉強をしたり、お金を貯めたりしようと思っています。どうせ勉強するなら資格でも、と資格の取得を考えているのですが、資格はやはりあったほうが有利でしょうか?

インターネット上では、資格については残念ながらあまりよい情報がありません。資格の最高位といわれる司法試験でさえ、弁護士が就職難であることなどが揶揄されてしまう状況です。

弁護士がこうですから、行政書士、社会保険労務士などその他の資格については、いわずもがなです。そして、そのほとんどが「食えない」「取っても意味がない」というもので、私自身、行政書士試験を受験していた頃は、こういった情報を見ては落ち込み、自分自身が一心不乱に取り組んでいる資格試験は無意味なものではないかと悩みました。試験中はとにかくそういう情報は見ないようにし、最終的に合格はできましたが、それでも将来への不安は拭えませんでした。本当にこの資格を取ってよかったのだろうか、と。

現在、行政書士として開業して9年、士業向けの経営コンサルタントとして5年になりますが、全国の1,000名を超える士業と会って、私の不安は今ではまったくなくなりました。

なぜなら、全国には多数の資格で成功している人がいたからです。もちろん、残念ながら士業でうまくいかず廃業してしまう方、開業休店状態の方など、さまざまな方がいらっしゃいます。しかし、私が想像していた以上に、全国には成功している士業が多数存在したのです。

結論をいえば、資格を取ることは無駄ではありません。資格を取ったあと、他人の意見やインターネットの情報に左右され、資格を生かしていないことこそが無駄なのです。インターネット上では、負の情報にフォーカスされがちですが、全国には「無名で成功している人」が多数いるということを覚えていてください。これが5年のコンサルタント活動の結論です。

ですから、あなたが資格を取ろうとしている行為は決して無駄にはなりません。

資格を取った後、現状を踏まえた上で正しい努力が必要になる

ただし、過去のように資格さえ取れば何もしないで仕事が来るという時代は終わりました。

士業人口は増え続け、すでに私たちは選ばれる存在になっています。加えて人口が減り、あわせて全体の法人数も減少する中、高い敷居のある部屋であぐらをかいていては、自然に淘汰されてしまうでしょう。

ですから、現代に合った「正しい努力」が必要になります。過去は看板を出しておけばそれで営業は十分、という時代もあったのかもしれませんが、今後は現状に即した営業を行い、そして士業の枠にとらわれない活動が必要になります。詳しいことは別の回答で解説しますが、従来の士業業務に加え、セミナーや勉強会、コンサルティングやコーチングなどに積極的に取り組むことが正しい努力になります。

誰かに無駄といわれたら辞めてしまうくらい、小さな決意なのか?

最後にひとつだけ重要なことをお伝えしましょう。

はっきりいって今からお伝えすることは精神論に近いものですが、あなたの決意は誰かに少し批判されたら萎えてしまうものなのでしょうか。もしそうなら、厳しい言い方かもしれませんが、独立開業は楽しいことだけではありませんので、考え直してもよいかもしれません。

私が23歳で独立開業したとき、周りの友人や知人は誰一人として「うまくいく」とはいいませんでした。インターネット上の情報もネガティブなものばかりでした。23歳という年齢で開業しただけで、求めてもいない説教をされたこともありましたし、インターネット上で実力以上に名前が売れてしまったとき、メールでいわれのない非難をされることもありました。

「行政書士として品位のある活動をしなさい」

総合するとこういったご意見が多かったような記憶があります。

たしかにブログの更新やメールマガジンなど、今では当たり前になりましたが2003年頃は目新しく、目立つ存在だったのかもしれません。しかしながら、私は自分が目指した新しい行政書士像、新しい士業の形を求めて約9年間取り組んできました。それは、行政書士という資格を取ったとしても、自分の生き方は自分で決めたいと思ったからです。誰に何をいわれても実現したいビジネスの形があり、それを決意していました。

ですから、参考にすることはあってもいわれのない批判や叱責によって、自分の意思を変えたりはしませんでした。そうした揺るぎない決意があったからこそ、一定の成功段階までこられたのだと思います。

そして私は、士業で成功するための営業手法やマーケティングをほぼ確立させました。言い換えれば、成功するための方法はもうわかっています。あなたが成功するかどうかは、他人の意見やネット上の意見がどうあれ、あなたがその方針に沿って行動するかどうかです。一度しかない人生です。他人や、しかも誰が書いたかもわからないネット上の意見に左右されて自分の人生を決めるなんてちょっともったいないと思いませんか? ぜひ、もう一度考えてみてください。

ちなみに、全国で多数の成功者を見てきましたが、経歴や年齢は本当に千差万別で、どういう年齢でどういうタイミングで開業したから成功した、という法則性はあまり見られないことに気づきました。やはり、成功者に共通のルールなどないのかと考えていたところ、たったひとつだけ成功者には共通点があることに気づきました。それが「絶対に成功する」という決意です。

こういう決意が決まっている人は、多少マーケティングがいびつでも、戦略に矛盾があっても、誰に何をいわれても成功してしまいます。

あなたの決意はどのくらいのものですか? 他人の意見によって思わず萎えてしまう気持ちもわかりますが、それ以上にあなた自身の決意が重要です。

抽象的な話だったかもしれませんが、極めて重要なことですので、ぜひ忘れずにいてください。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年8月22日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。