SAF燃料の将来:航空用より自動車用

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航空燃料が試す安全保障

航空燃料が試す安全保障 - 日本経済新聞
天ぷらやトンカツを揚げた後に残る油で飛行機を飛ばす。そんな航空燃料の大転換が始まろうとしている。新時代の到来を実感させるが、重大な安全保障の死角が潜んでいることは見逃せない。コスモ石油堺製油所(堺市)では、日本初となる再生航空燃料(SAF)の量産プラントの建設が大詰めを迎えている。2024年度中の完成を目指している。S...

そもそも論でいえば、なぜSAFを導入するかというところをしっかりすべきです。

CO2増加による温暖化というのは、税金を食うための利権とマスヒステリーです。CO2増加が人間のせいだというエビデンスはありません。

環境活動家や、それをいうことで利益がある政治家や企業が世論を操作しているだけです。それで儲かる人たちがいるわけです。食品のフェアトレードと同じです。

事実EUでは内燃機関車両全廃し、EVに置き換えるという過激な政策をひっこめつつある。日本車に勝てないから、EVでいう思惑がEUにはあったのでしょう。ですが、蓋をあけたら中国とテスラの一人勝ちです。

そもそも本当にEVにしないと地球の危機ならば、軍用車両はみんなEVにすべきですが、そんな話はまったくない。これを見れば語るに落ちる、というところです。

長期的にみればEVが進化して、使い勝手がよくなれば更に普及するでしょうが、10年後に全部EVにしろというのはファナティックです。

無論地下資源の濫費は長期的に見れば控えるほうがいいでしょう。また途上国でおきている大気汚染もSAF導入でかなり緩和されるでしょう。

ぼくは、自動車はディーゼルのハイブリッドにして、燃料にSAFを多用するほうが現在のEVよりも環境負荷が小さく、インフラ投資も少なくて済むと思います。ほとんどインフラの投資は必要ない。

EVにしろ、水素にしろ莫大な投資が必要です。SAFの原料にて天然ガスから作る燃料も含めるべきです。石油由来よりも燃費がいいし、大気汚染もすくないからです。

コスモ石油堺製油所(堺市)では、日本初となる再生航空燃料(SAF)の量産プラントの建設が大詰めを迎えている。2024年度中の完成を目指している。

SAFとは廃食油、都市ごみなどの循環型原料でつくる航空燃料だ。石油からつくるジェット燃料に比べて大幅に温暖化ガスの排出を減らせる。堺製油所の生産量は年3万キロリットル。既存のジェット燃料に3割混ぜれば東京―ロンドン間を700回飛行できる。

原料の廃食油は全量を国内で調達する。「丸亀製麺」「スシロー」など消費者になじみ深い外食チェーンが調達先の候補に名を連ねる。家庭からの回収にも努める。ENEOSや出光興産も国内での生産や輸入を準備している。

国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)は50年のカーボンニュートラルを掲げる。航空業界の温暖化ガス排出量は世界全体の3%程度だが、乗客1人を1キロメートル運ぶ際の温暖化ガス排出は鉄道の6倍と多く、「飛び恥」と批判されてきた。

こういうのは環境左派や環境利権屋の世論誘導です。

SAFを求めるのは航空会社だけではない。米マイクロソフトはオーストリアの石油会社OMVなどとSAFの調達契約を交わした。その環境価値を社員の出張や製品輸送で使う航空機からの温暖化ガス排出の削減にあてる。

気候関連情報の開示を企業に求める流れも強まっている。自社工場が出す温暖化ガスだけでなく、原料調達から廃棄に至るすべての活動で排出削減が求められ、そのなかには社員の移動や製品輸送にかかわる排出も含まれる。グローバル企業は自前で再生エネやSAFの確保に走り出した。

こういう変化には莫大な投資が必要であり、それは本来必要ない。利権屋が儲かるだけの仕組みづくりです。それを批判すると「非国民」扱いされるので、多くの企業は従ってしまいます。

それほどいうならば、旅客機はジェット機を全廃してターボプロップにすればいいじゃないかと思いますが、そんな話はでてきません。

廃食油を原料とするSAFは致命的な弱点を持つ。需要を満たすには世界中でまったく足りないのだ。

IATAによれば、24年のSAF生産量は前年比3倍に増えるが、燃料全体の0.5%どまりだ。航空燃料をすべて置き換えるには50年に3億トン以上が必要だ。

SAF生産は廃食油や獣脂を使う製法が先行する。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部の中島学氏は「世界の廃食油は3000万~4000万トン。半分をSAF原料に確保できても、30年時点で米欧の規制・目標量の合計である1300万トンをやっと満たせる程度で、廃食油はいずれ足りなくなる」と指摘する。待ち受けるのは争奪戦だ。すでに価格上昇が起きている。

別に全部を廃油由来にする必要はない。それまで費用を掛けて捨てて、なおかつ廃棄に金がかかる廃油を利用できる、という点で満足すべきです。

不足を補うには別の原料をみつける必要がある。トウモロコシやサトウキビなどを原料とするバイオエタノールからSAFをつくったり、非可食性の植物を原料に使い、その耕作地を増やしたりする技術革新を追求するしかない。

これは以前流行ったグリーンエナジーです。穀物メジャーの陰謀です。とうもろこしなどを燃やせば、その増産が必要となり彼らが儲かります。だからアマゾンの森林を伐採してとうもろこしを栽培しようという話もありました。

バイオマス発電も同じです。本来バイオマス発電は、製材所から出る廃材を利用して発電や給湯を行うもので、地産地消の小規模なものです。ですが大規模なものは熱帯林を伐採して多量のアブラを使ってフネやトラックで運搬します。これがエコなわけがないでしょう。

これまたサトウキビの絞りカスなど廃棄すべきものをリサイクルできるということで我慢すべきです。

それでも足りない供給を満たす手段として合成燃料に期待が集まる。水素と工場などから回収する二酸化炭素(CO2)を反応させてジェット燃料を人工的につくる技術だ。50年には最大のSAF供給手段になるとみられている。

そこでも壁は原料となる水素の確保だ。発電や製鉄、自動車などの基幹産業も脱炭素の手段として水素をあてにする。もし国内で生産する銑鉄をすべて水素還元製鉄でつくるなら600万~700万トンの、都市ガスの9割を合成燃料に置き換えるなら1400万トンの水素が必要だ。それも温暖化ガスを出さずにつくるカーボンフリー水素でなければならない。

そんなことを不可能に決まっています。水素作るにもエネルギーがいります。

世界の脱炭素はイノベーションの途上にある水素で帳尻をあわせる絵を描く。福島県浪江町にある国内最大級の低炭素水素の製造設備は、太陽光パネルを東京ドーム4個分の面積で設置し、生産できる水素は年間約200トンだ。国内調達が非現実的となると、海外から持ってくるしかない。

太陽光発電は事実上昼間しか使えず、天候によっては昼間も無理です。発電コストも火力や原子力より相当高い。しかも現在メガソーラーが無軌道に作ることができ、世論の反対を受けています。これ以上メガソーラーは無理です。

輸出余力はどこにあるのか。太陽光、風力などの再生エネでつくるグリーン水素や、化石燃料から取り出すブルー水素のどちらであっても、広大な土地と再生エネ、化石燃料などがそろう条件を考えると結局、オーストラリアや中東・アフリカ、米国が候補になる。

現状最も安定しているのが天然ガスやシェールガスを原料とした合成燃料です。技術も確立されています。天然ガスを液化して日本まで運んで利用するよりも現地にプラントを作って燃料にした方が、液化のインフラやコストもなく安価です。

それから特に我が国の場合、経済安全保障という面からもエネルギー消費を減らすことが必要です。特に建物の冷暖房効率を上げることです。この点では欧州に大きく遅れています。断熱建物にすれば冷暖房に使うエネルギーが大幅に減ります。建て替えが無理でもサッシを替えるだけでもそうとうに効果があります。

このような小さな節約を積み上げていくことが必要だと思います。

European Security & Defenceに寄稿しました。
JGSDF calls for numerous AFVs within Japanese MoD’s largest ever budget request

東京新聞にコメントしました。
兵器向け部品の値段「見積り高めでも通る」 防衛予算増額で受注業者の利益かさ上げ 「ばらまき」と指摘も

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
航空専門医がいない空自に戦闘機開発はできない やる気のある医官が次々に辞める自衛隊の内情


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年9月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。