米中距離ミサイルの日本配備計画
2024年9月19日のRECORD CHINAは「米国は日本に中距離および短距離ミサイルシステムを配備する可能性を検討している。中国外交部の林剣報道官は9月18日の定例記者会見で中国は米国に対し配備計画を断念するよう促すと述べた。」と報道した。
このような米国による日本へのミサイル配備計画は、以前から報道されており、これが初めてではない。その背景は、近年の核を含め軍拡を進める中国の覇権主義的な動きに対する米国の安全保障上の危機感であり、対中抑止力の強化が目的であると言えよう。
日本政府の対応
こうした動きに対する日本政府の対応は明らかではない。米国からの具体的な提案の有無や日本側の検討状況の有無なども不明である。しかし、この問題に対する批判的な書籍は出版されている。たとえば、布施祐仁著「従属の代償 日米軍事一体化の真実」(講談社現代新書)などである。
この問題は、日米同盟の本質や日本の安全保障に直接かかわる問題であるから、現下の国際情勢を含め政治的、軍事的な多角的検討が必要である。
現下の国際情勢の検討
ロシアによるウクライナ侵略や、パレスチナ軍事紛争拡大など、現下の国際情勢は流動的で不安定である。東アジアにおいても、西太平洋への進出を狙う核保有国中国による南シナ海や東シナ海における現状変更の動き、「台湾有事」や「尖閣有事」の危険性など楽観を許さぬ情勢である。さらに、ミサイル発射を繰り返す核保有国北朝鮮の動きも朝鮮半島を含む東アジアの不安定要因である。
このような流動的で不安定な国際情勢や安全保障環境を考えれば、日本国と日本国民を守るための防衛力の強化と日米同盟の強化による対中抑止力の強化は必要不可欠であると言えよう。
軍事的検討
米国による日本への大量の中距離ミサイル配備は、軍事的には対中抑止力の強化に有効であろう。なぜなら、日本の敵基地攻撃能力(反撃能力)を重層的に補完し補強する機能を有するからである。
日本配備の射程1000キロないし2000キロの大量の米中距離ミサイルは、北京・上海など中国本土を射程に収め、地上の航空機基地、ミサイル発射基地、集結した部隊、港湾内の主力艦、重要指揮・命令・統制・情報・通信関連施設などに重大な打撃を与えると見られる。
したがって、日本政府としては、対中抑止力を一段と強化するため、米国による日本への中距離ミサイル配備を認めるべきである。その場合、日本としては主権国家として日本配備の米中距離ミサイルについては、日米の共同管理・共同運用を配備の条件とすべきである。
絶大な対中抑止力
前記のとおり、中国外交部の林剣報道官は9月18日の定例記者会館で「中国は米国に対し、配備計画を断念するよう促す」と述べた。中国は日本への大量の米中距離ミサイル配備を恐れており、中国本土に届く中距離ミサイルは中国にとって脅威であり、日本にとって絶大な対中抑止力があることを示すものである。
中国は、「中華民族の偉大な復興」を最大の国家目標とし、米国を超える世界最大最強の軍事大国を目指し、台湾統一、太平洋への進出を目指している。尖閣諸島についても東シナ海に防空識別圏を設定し支配を常態化させ日本の実効支配を打破してきた(劉明福著「中国軍事強国への夢」2023年「文春新書」参照)。
今般の領空侵犯や領海侵犯、ブイの設置なども同じ意図に基づくものである。このような中国の意図は不変であるから、米国による日本への大量の中距離ミサイル配備を含め、日本国と日本国民を守るため、日本の防衛力強化と日米同盟の強化は必要不可欠である。