失敗上手と失敗ベタ、3つの違い

黒坂岳央です。

30代、40代と年齢を重ねると、非常に大きな格差がついてしまうものだ。あらゆる格差の中でも決定的になるのが「失敗経験格差」だと思っている。

自分は小さい頃から失敗だらけの人生だったので、自慢ではないが失敗することについては「達人の域」に達していると思っている。似たような感覚を持っているのがビジネスの経営者やフリーランスである。他方で何も身銭を切らず、失敗を避け続けてリスクテイクを一切しないまま大人になってしまった失敗ベタな人もいる。

失敗上手と失敗ベタの違いは何か?

Yuto photographer/iStock

特徴1. 失敗上手

失敗経験が豊富な人は「失敗するのがとにかく上手い」という特徴を持っている。「失敗上手」と聞くと不思議な印象を持つかも知れないが、これはリスクテイクに慣れた百戦錬磨の経営者ならほぼ全員が有する特徴である。

失敗上手は「スモールスタート」で始めるのが基本中の基本だ。その逆に失敗に慣れていない人は何をやるにもビッグスタートをしてしまう。

たとえばまったく新しい土地へ引っ越しをするということになれば、失敗上手はまずウィークリーマンションや賃貸マンションでしばらく住む経験を積んだ上で、「あっちの地域へ変えたほうがいい」「このエリアはマンションより一戸建てがいい」といった実際に住んだデータを分析して、戸建てやマンションを購入する。一方で、失敗下手は手元に情報や経験がない状態でいきなり物件を買って後悔をする。

これは実際に会社員時代の経験だが、同僚の一人暮らしの中年男性社員が、休日暇つぶしに電車に乗って田舎にいった。彼は見知らぬ街のマンションギャラリーにふらりと入って、営業されてその場でファミリータイプの3LDKの部屋を購入。だが、実際に住んでみると一人暮らしには広すぎるし、郊外で会社から通勤時間が長くなり、なおかつ流動性が低いので売却にも困ってしまった。売れないことはないが、購入価格とかけ離れた売価になってしまうのである。その後は物置小屋になったマンションのローンを支払い続けて、会社の近くで築古ワンルームマンションを借りて住んでいたのだ。

特徴2. 自己肯定感が強い

そして失敗上手は自己肯定感が非常に強い。

経営者を長くやって、事前に想定したとおりに仕事が進まなくて自分を責めてしまう人を自分は一人も知らない。彼らは失敗と書いて経験を読む。初めてやることは自分の実力を超える難しいものだったり、経験不足から事前に想定しきれないことも数多くある。実際やってみると想定外のトラブルで失敗することはいくらでもある。

彼らが違うのはここからで、失敗を深く掘り下げて分析を続け、学習素材に変えてしまうのだ。今でこそ大きな企業経営をする社長はたいてい、「昔は商売がうまくいかなくて何度も会社を潰した。当時は大変なこともあったが、あの経験が今の自分を作っている」といったエピソードを持っている。

「頑張ったけどうまくいかなかった」このように解像度が粗く片付けると、そこから何も学べないし労力や時間、コストを投下した分が無駄になってしまう。加えて自分を責めるだけで何もいいことはない。

何度失敗しても成功まで諦めなければ、「失敗は成功の必要経費」と捉えることができる。彼らは骨の髄までその感覚が染み渡っているため、失敗してもまったく落ち込むことはないのだ。

特徴3. 努力家

失敗上手は例外なく、努力家揃いである。

「辛いことから我慢せずに逃げてもいい。頑張ることはバカらしい」昨今、こうした意見が指示されている様子をよく見る。アクセスをたくさん稼いでいるのは多くの共感を呼んでいるからだろう。

しかし、不思議なことにそうした意見を出している人ほど、一般人よりはるかに頑張っているし、投稿を継続したり、アンチコメントをやり過ごしたりと「圧倒的に努力し、辛いことに立ち向かって今の立場を手に入れている」という矛盾を抱えている。少なくとも、影響力を得るプロセスは誰がどうやっても非常に大変で避けられないストレスも多い。

そして彼らの言う「楽に生きろ」という提案にも違和感がある。冷静に考えれば人類は世界中どこを見渡しても皆、今日明日を生き残ることに必死である。「嫌なことから逃げ、頑張らなくてもいい立場」について一生涯、考えることすらない人は圧倒的大多数である。

つまり、富裕層以外がそのような生き方の選択肢を考えられる時点で、日本は非常に恵まれた国家ということでもあるし、結局、あらゆる努力や嫌なことをせずに済むのは努力の結果、その立場を得た強者にしか得られないという矛盾の壁が立ちはだかる。

そこを考慮すると、たくさん失敗できる人とは努力できる人と言える。一切の努力をしたくない、嫌なことは何一つしたくない、という人は失敗を許容できる器がない。もちろん、ムダな努力や不毛はストレスに耐えることは無価値だが、最初からどれが有益でどれが無益な活動か?ということは簡単にわかるものではないのである。

人生は本来、失敗だらけである。特に過去の自分がやったことのない新規の領域や経験が浅い分野は失敗して当然であり、むしろ過去3ヶ月間まったく失敗していないということは現状維持になっているということなので生き方を見直すタイミングかもしれない。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。