日本の電力は足りるか?:女川原発2号機だけでは全く心許ない電力供給

昨日「遠くなったのか?ノーベル賞」という話題を振ったところで日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に平和賞授賞が決まりました。おめでとうございます。戦後数多くの方々が被ばくの事実を伝え続け、世界にその根絶を訴えてきた長年の活動が実ったものです。昨日申し上げたように平和賞は政治的要素が非常に強く、止まらない2つの戦争では核が戦術の「隠し技」で使われています。まさにこの蛮行を止めさせるための平和賞なのでしょう。今回のメッセージが広く世界に伝わることを祈念します。

では今週のつぶやきをお送りします。

市場の足元しっかり

市場ほどデータに敏感なところはありません。今週はアメリカで消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が発表になりCPIは前月より下がったのに事前予想を上回ったことが気に食わないのか発表直後は血迷った相場つきでした。その後、市場のご機嫌は直ったのですが傍で見ていると駄々っ子をあやす母親のようなもので目先筋と長期筋が対立する構図がハッキリ見て取れます。これは先週までの中国株ブームも同様で8日に国慶節明けで上海市場が開くと指数が10%上げてその後、5%下げるという「御乱交」ぶりだし、同日の香港ハンセン指数は10%近く下げました。これは中国政府から景気刺激策の発表がその日になかったからです。

投資家はそこまでせっかちなのか、と私は問いたいです。中国政府の景気刺激策は早ければこの週末にも40兆円程度の規模のものが出るとみられています。中身次第ですが、一時的には中国市場に安ど感が生まれるとみています。つまり投資をするならもう少し腰を据え、大局を見るようにしないと目先のニュースに振り回されるだけなのです。上述のアメリカのCPIも専門家の事前予想に振り回されず、前月からはしっかり下がっているというトレンドの確認が重要だと思うのです。

アメリカ市場はもう数週間、ブリージングエアー(さわやかな空気)を楽しむことができそうです。カナダも指数が連日、高値更新しています。理由は継続的に利下げが見込まれるためです。日本株も日経平均4万円回復までもう少しのところです。中国が週末に景気刺激策を発表すると機関投資家の資金が香港に向かうので日本向けがちょっと寂しくなるかもしれませんが、私は以前から申し上げているように企業景気はそれほど悪くはないので株価は引き続き堅調だとみています。ただし、衆議院選挙でどれだけサプライズがあるか次第になり、政局の不安定化を想起させるようになれば海外マネーはいったんホールドになるとみています。

セブンイレブンの行方

先週のつぶやきでアリマンタシォン クシュタール社は資金をケベック年金基金から支援を受けるので残りはアメリカ事業の政府承認問題が主眼と申し上げました。するとたちまちクシュタール社は買収額を1兆円引き上げてきました。ずいぶん前に「この買収は金で決まる。あと1-2兆円上乗せすれば終わる」と申し上げましたがその流れになっています。一方のセブンは今週の決算発表が弱り目に祟り目状態となりました。同日発表のライバル、ローソンとファミマが好決算だったのに対し、セブン1人負けになりました。

併せてセブン社は買収対抗策というか今更ながらの「企業価値向上策」を打ち出し、思い切った構造改革を示しています。私はあまり人の悪口は言いたくないのですが、セブンの経営に関してはコロナ期に話題になった百貨店事業の売却、特に西武池袋店をめぐるドタバタを含め、経営陣は何をしているのかと思います。想像するに鈴木敏文氏の影響力が未だにあって社員の中核に「考える人」が育たなかったのだと思います。当時、ほぼすべてのセブン幹部は鈴木氏の顔色だけをうかがい、一切の判断をしなかったのです。PBブランドの味見も皇帝、鈴木氏の意向でした。それが今のセブンの骨格を作ったのです。それもあるのか、あの店舗で揚げたドーナッツのクオリティは酷すぎます。

ところで今回セブン社が打ち出した構造改革ですが、これをみて笑ったのは私だけでしょうか?なぜかって?「クシュタール様、ここまで会社を整理させていただきますのでどうぞ、お持ち帰りくださいませ」と言っているようなものだからです。クシュタール社にとってこのおもちゃ箱の様な企業に於いてグループ内にある様々な事業のうち例えばデニーズとか赤ちゃん本舗なんていらないのは明白でコンビニ事業一筋だと思います。ただしセブンが培った日本型経営スタイルはアジア地区でディファクトスタンダードになっており、クシュタール社にはノウハウが全くないのでそこは使い分けることになります。ずばり、買収は成立すると予想しています。いや、今の経営陣を退任させ、刷新を図るべきです。

日本の電力は足りるか?

東北電力の女川発電所2号機の原発が年内に発電再開となりそうです。東日本ではようやく復活第一号になります。東電の柏崎刈羽も個人的な根拠なき予想ですが、来年には再稼働できるとみています。日本で原発の存亡議論が続きますが、既に存在し使えるものは使うべきでしょう。原発議論は新設についての議論が主体になるべきだと考えています。ただ、その新設もどのような形にせよ相当急ぐ議論になると思います。

日本の電力需要は2030年に8640億kWh、2050年に1億kWhを見込んでいるようです。これは日本式の節電を継続した場合の予想ですが、「節電しながら現状が続く」前提が崩れることを十分想定していない気がするのです。それはAIの電気消費量がとてつもない点であります。アメリカではあのスリーマイル島原発の再稼働の準備が始まります。その再稼働の全電力835メガワットを全部マイクロソフト社に20年間供給するのです。理由は生成AIによりデータセンターの電力需要が急増しているためです。

女川原子力発電所 東北電力HPより

さらに驚くのは国際エネルギー機関の試算でAIと仮想通貨のマイニングなどで22年から26年までの間でその関連で2.3倍に増えると見込まれているのです。AIのデータセンターは日本でも当然今後、相当数が建設されると見込まれます。そこで消費する電力をどう賄うのか、たぶん、上述の試算には入っていないように見受けられます。我々が「夏に電力ギリギリかも」と言っているどころの話ではなくなるということです。そして電力がなければAIが動かないとも言えるのです。その点で日本全体にどれだけ電力供給をすべきなのか、早急なる見直しとその対策を施すべきだと思います。

後記
私は社長ですが様々な雑用を自分で処理する役割もあります。20年も前に完成した建物に今週突然、4つも問題が生じてその対策に大わらわ。うち3つは直ちに修復し、あと一つ水漏れ修繕を今日から手を付けます。20年前の建物にお前の責任はあるのか、と言われるとないのですが、他人がやると修繕のコツがわからず、膨大な作業を提案してきます。ところが私のチームが直接がやると15分ぐらいでほとんどコストなしで終わるのです。なぜかと言えば問題解決の切り口と工夫の仕方を知っているからで「無駄遣いするなら俺がやる」と言わざるを得ないのです。逆に言えば多くの方はずいぶん無駄なお金を払っているともいえそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年10月12日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。