テスラの自動運転と日本の運転手不足

日本経済新聞によれば、テスラは「サイバーキャブ」と呼ばれる自動運転のタクシーを発表し、2026年の生産開始を目指すとしています。

サイバーキャブ Tesla HPより

さらに人や貨物の大量輸送を目的とする「ロボバン」(写真)という自動運転車両も発表。マイクロバスと同じ程度の20人までの輸送ができる能力を持っています。

ロボバン Tesla HPより

完全な無人の自動運転については安全性の観点から実用化がいつになるかは未定です。しかし、将来の技術進歩を見越して不完全であっても実用化に向けて挑戦していく姿勢は、テスラに未だベンチャー精神が消えていないことを示しています。

日本でも自動運転の技術開発は進んでいると思いますが、障害になりそうなのが安全規制です。自動運転のテストをして1件でも事故やトラブルが発生すれば大騒ぎして問題化させてしまう。

2022年の交通事故死者数は全国で3,541人です。「事故ゼロ」を目指すのではなく「人間が運転するよりも安全」であれば実用化した方が合理的です。

1人1人の人間の技術に頼って運転するよりも、運転技術の知見を蓄積した人工知能が車を制御し、2つの目だけではなく多数のカメラによって安全確認と車両コントロールをする自動運転の方が安全性が高いことは明らかです。

日本ではバスやタクシーの運転手不足が問題化しています。地方ではタクシーを呼ぼうとしても運転手不足で乗れる車が足りないという事態が珍しくなくなっています。東京でもバスの運転手が不足して利用者が増えても増便できない問題が発生しています。

自動運転によって人間が運転から解放されれば、ライフスタイルは大きく変わります。

アメリカでは数年後には自動運転のタクシーやバスが当たり前のように走っていることでしょう。その時の日本はきっと運転手不足にも関わらず、相変わらずドライバーが運転をする社会のままでしょう。

不完全でもやってみて修正していく社会と、完璧を求めて失敗の可能性があったらやらない社会。

どちらが良いのかは明らかです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年10月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。