立憲野田代表の世襲制限「世襲もないクリーンな国へ」の危険性とダブスタ

またお得意のダブルスタンダードか

立憲民主党の野田佳彦の世襲制限「世襲もないクリーンな国へ」

 政治家になるチャンスをすべての人に平等に、まずは政治資金の世襲制限を – 立憲民主党 2024年10月11日

 「政権交代こそ、最大の政治改革。」政権政策発表 – 立憲民主党 2024年10月7日

立憲民主党の野田佳彦代表は、今般の衆議院議員選挙に際して、「世襲制限」を公約に掲げました。先だって「政治資金世襲制限法案」(正式名称「政治資金規正法の一部を改正する法律案」)を国会に提出しています。

この法案は(1)国会議員が引退したり、亡くなったりした場合に、国会議員関係政治団体の代表者を3親等以内の親族に引き継ぐこと(2)国会議員関係政治団体が親族やその人の国会議員関係政治団体に寄附すること――の2つを禁止するもの

これ、かなり侵襲性の高い人権侵害だということに気づくでしょうか?

比較的世襲議員が多い自民党との関係では*1、立憲民主党は「世襲制限」を主張することで利益を得る立場だということは割引かなければならないでしょう。

また、「この法案ではこの内容」ということに留まらず、立憲民主党のスローガンでは「世襲もないクリーンな世界へ」などと掲げており、この発想は天皇・皇室を否定する危険な思想に繋がるものだと言えます。

この人、国会での皇室制度に関する全体会議で何て発言したか知ってるでしょうか?

安定的な皇位継承を確保するための方策の検討、これは、この議論に入れないということは万やむを得ないという立場で今回の方針を私は是とするものであって、積極的にこれでいいですよという意味ではありませんので

立憲民主党としての意見書ともズレた事を言う野田氏の言う「世襲のない世界」とは…

ところで、この姿勢がダブルスタンダードではないか?という批判があります。

朝日新聞「中村喜四郎長男が出馬、事実上容認、ダブスタでは?」

自民の世襲は「おかしい」、でも野党系無所属はOK? 立憲・野田氏 [立憲]:朝日新聞デジタル 大久保貴裕2024年10月6日 17時30分

自民の世襲は「おかしい」、でも野党系無所属はOK? 立憲・野田氏 [立憲]:朝日新聞デジタル

立憲民主党の野田佳彦代表は6日、訪問先の岐阜県可児市の演説で、次期衆院選で政治とカネの問題とともに「世襲」が争点になると強調し、国会議員の世襲制限を進める考えを示した。ただし、引退を表明した立憲の中村喜四郎衆院議員の茨城7区では、中村氏の長男が無所属での立候補を表明し、野田氏は事実上容認。対抗馬の擁立も見送る考えで、野田氏の自民党に対する「世襲」批判は、ダブルスタンダードとの批判を招きかない状況だ。

【茨城新聞】《連載:衆院選2024 茨城選挙区情勢》 7区 自民前職に新人挑む

中村氏は古河市選出の県議。後援会「喜友会」を引き継ぎ、県西全域で知名度向上に力を入れる。出馬表明後、街頭でのつじ立ちでは「新旧交代を目指す挑戦者」をスローガンに「自民政治は権力の暴走だ」と強調。世襲批判には「努力を重ねる」と主張する。

茨城7区を地盤とする立憲民主党の中村喜四郎衆院議員の長男である中村勇太(はやと)氏(茨城県議)が、父親の選挙区で出馬していること、中村勇太氏は父親の「喜友会」を引き継いでいることが報じられています。

中村勇太氏は立憲民主党の公認ではない無所属での出馬ですが、立憲民主党や野田氏が世襲批判しているところの趣旨からは、ダブルスタンダードと言われても仕方がないでしょう。どうせ当選したら立憲民主党の会派に所属するでしょうし。

とはいえ、ここでは中村勇太氏を殊更に攻撃する趣旨ではないので、次項で他の報道ぶりを紹介します。

能力のある「多様性」ある議員構成となる政治側の改革が必要では?

中村喜四郎氏長男・勇太県議が突き進む「独自路線」 父の側近と距離感、立民に接近…(1/2ページ) – 産経ニュース 2020/1/30 22:32

勇太氏は平成30年12月の県議選で、喜四郎氏の地盤でもある古河市選挙区から初当選した。

出馬をめぐっては一悶着(もんちゃく)があった。同選挙区が、喜四郎氏を長年支えてきたベテラン現職の選挙区だったからだ。勇太氏にとっては、喜四郎氏の支持層からも「仲間の背中を刺すような行為だ」と批判を浴びる逆風の選挙になったが、この現職を抑えて激戦を勝ち抜いた。

ただ、確執は尾を引き、勇太氏はその後も県議会の喜四郎氏会派とは距離を置いている。会派入りの打診も受けたが、固辞し続けているという。

とはいえ、「青臭さ」が目立つタイプの若手政治家かといえば、そういうわけでもないようだ。

喜四郎氏とも通じる「どぶ板」を信条とし、週末には地元での辻立ちを欠かさない。選挙の際、選挙カーではなくバイクで選挙区を回る手法も父譲りだ。

産経新聞は中村勇太氏について一定の評価をしている様子です。

政治の世界の力学、物事の解決のための政治的方策や人間の見抜き方、付き合い方などは一般社会で生きているだけでは身に付きにくいものだと思います。私もその方面の方にお話を伺って「そういう取り組み方もあるのか」「そういう人物評価が為されているのか」と、発想の外にある実態を知り、政治の奥深さを垣間見ることがあります。

それを(十分かはともかく)親から学べることは大きな財産であり、本来はその経験値を国民に還元するべきものでしょう。「多様性」の観点からは、そうした議員が在る程度居た方が安定的な構成になるのではないでしょうか?特に、YouTube動画などで一時的な人気を得た者がある首長選挙で持ち上げられた姿を見た後だと。という皮肉の一つでも言いたくなります。

他方で、世襲議員が要職に就きやすいというのは現実であり、その事が弊害となって国民生活に支障をきたさないようにしなければならないという問題意識は正当だと思います。

ただし、それは立憲民主党の世襲制限法案のように法律によって国家権力が相続や親族の自由意思を制限するような制度を作るのではなく、ある選挙区での出馬に当たって政党・党員がその候補者を審査するなどといった、「政治側の制度改革」によって、世襲による弊害は除去されるべきではないでしょうか?


編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。