清和会(解散)はもともと衆議院だけで59人もの勢力だったが、20人にまで減少してしまった。自業自得ではあるが、安倍レガシーを継承する人が多いことも大事なことと願う立場からは、いかにも残念だ。
もともと清和会は、岸派の大部分を引き継いだ福田赳夫派として設立され、安倍晋太郎、三塚博、森喜朗、小泉純一郎、町村信孝、細田博之、安倍晋三と引き継がれ、安倍暗殺事件ののちは後継者を決められずにいる。
どうしてその清和会が無残なことになったかといえば、普通には裏金問題(場合によっては旧統一教会問題も)が原因と理解されているが、保守系の一部は岸田・石破首相が不当な疑惑と戦わなかったことだと言う。
しかし、私はどちらでもなく、適切な損切りを怠ったためだと理解している。
いわゆる「裏金問題」の悪質さについて、私は「大規模で長期にわたる常習的駐禁違反」みたいなものと受け止めている。政治資金で悪質なのは、収賄に当たるような金の獲得だ。しかし、裏金の原資である政治資金パーティーは、法律に則った正々堂々たるものだし、賄賂性もないし、金額もしれているし、使い途も政治資金として不適切なものは少ないようだ。
ただ、長期にわたり脳天気に不記載を続けていたのは、いくら悪質性が低いといっても政治団体として大馬鹿だとしか言いようがない。
個々の政治家も不信に思わなかったのは許されないが、当選回数が少ない議員は、派閥などから世話された古参秘書が事務所を仕切っていて、派閥からの指示と言われたら、そんなものかと受け入れてしまっていた。さらに、場合によっては、使用についても秘書が差配していたりもしていた。
清和会(安倍派)はお金に汚いとか勘違いしている人がいる。しかし、典型的な利権である建設業界とか医師会、農協とかいったところは旧田中派(竹下派)が独占していたし、その代表は田中角栄、竹下登、金丸信、小沢一郎といった人たちだった。東北でなぜ立憲民主党が強いかといえば、そういう構造とのつながりがあるからだ。
それに対して、清和会は国士的な人が主体であり、利権はたとえば田中派の土木に対して建築は清和会だが、規模は小さい。
安倍晋三元首相については、もともと、清和会が安倍派だったことなどないし、2012年に再登板したときは、清和会の候補は町村氏だったので、派閥の運営にかかわったのは、最後の一年だけである。
ただ、過去にロッキード事件など多くのスキャンダルに見舞われてきた旧田中派は、弁護士なども揃えてそれなりに脇が固い。その点、清和会は大きなスキャンダルがなかったので、脇が甘い。
そして、だれが責めを負うかと言えば、詳細な経緯が不明な以上は、歴代会長で存命の森喜朗・小泉純一郎両氏が離党だとか、元総裁としての栄誉自体などのかたちで腹を切るべきだと私は提案していた。
それに加えて、塩谷・下村両氏や五人組などが比例重複辞退などして、若い人たちを救うべきであったと思う。
ところが、誰も十分に責任を取らないから、岸田・石破首相が処断せざるを得なくなったのだと思う。
石破首相の、非公認や比例重複からの除外は、広範に過ぎて、ほかの不祥事とバランスが取れなかったし、比例重複を外された候補が比例で自民党への投票を呼びかけない弊害を生んだ。また、小泉進次郎氏がその決定に加わっていたことは、そもそも父親の純一郎元首相が清和会会長として責任があるはずなのに、厚顔無恥としかいいようがなかった。
もっとも、その石破首相の過剰な処分を引き出したのは、清和会の人たちの多くが投票した高市早苗氏が幹事長でないと役職を受けないとか、小林鷹之氏があらゆる役職辞退をするなど、総選挙を挙党態勢で戦う姿勢でなかったことにも大きな原因がある。
これからどうするべきかといえば、すぐに派閥を復活するというわけにはいかないが、旧清和会所属の議員、元議員の再起を図り、処遇も適正にするべく組織的に行動をすることは必要なことだ。
それを中堅・若手も含めて、外部からも分かりやすいチームで進めるべきでないかと思う。
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