新興国に行くたびに「絶望的な気分」になるワケ

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不動産物件視察と金融商品の情報収集のためにフィリピンのマニラに来ています。フィリピンは、10年ほど前に初めて来て以来、定期的に足を運んでいます。

日本からの直行便の数も多く、4時間ほどで到着するので、韓国や台湾ほどではありませんが、アクセスは良好で負担があまりありません。

現地の気温は30度以上で、東京の初夏のような気候です。寒くなった東京から来ると、暖かいい気候はとてもありがたいものに感じます。

宿泊している空港隣接のシェラトンホテルもマリオットボンヴォイのステイタスでスイートにアップグレードされて快適です(写真)。

今回マニラ視察でまず感じた事は、マニラ中心部の発展がさらに加速し、もはや日本より豊かではないかとさえ感じられたことです。従来の中心部だけではなく、湾岸のカジノエリアは巨大なモールやホテルカジノ施設が次々と建設され、新興国ならではの勢いが感じられました。

日本でもお馴染みのファーストフードや有名チェーン店が、マニラのモールにも多数出店していましたが、価格を見ると東京より高いものがほとんどです。

これらのお店に来ているのはフィリピンの都市部に住む中流階級の人たちだと思いますが、豊かな消費生活を楽しんでいるようです。

またキリスト教カソリックが多い国なので、11月に入るとクリスマスシーズンとなり、既に街はホリデーシーズンの雰囲気に溢れています。

フィリピンの経済成長を実感するのは、不動産価格の高騰です。マニラのボニファシオグローバルシティというマニラの高級住宅エリアに10年近く前に完成前のコンドミニアムを購入しましたが、こちらの物件は経済成長を反映し購入時から2倍以上に値上がりしています。

日本経済が全体として停滞し、インフレと円安が進む中で日本人の個人生活レベルは一部の例外を除き全般には明らかに低下しています。成長する新興国との経済格差は急速に小さくなっています。

確かに国全体で見れば、相変わらず日本の方が経済的には豊かかもしれません。

しかし、大都市圏に生活するフィリピンの人たちは、もはや日本より豊かではないかと思えて仕方ありません。

新興国にやってきて経済成長を確認すればするほど、相対的な日本の衰退がくっきりと浮かび上がってしまう。

新興国に行くたびにこれから日本のことを憂いてしまい、何とも絶望的な気分になるのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。